身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

映画

プリキュアオールスターズ 春のカーニバル

春の外国映画のお薦めなら、これから公開されるアカデミー賞がらみの話題作群のなかで(今年の米アカデミー賞ノミネート作はトータルに言って例年よりレベルが高かった)もっともプッシュしたい『セッション』(4月17日公開、ジャズドラマーのタマゴが名門音…

味園ユニバース 監督/山下敦弘 感想

最近の邦画では珍しいオリジナル脚本の実現に向けて、関西にゆかりの才能が集結したような映画だ。舞台は大阪ミナミの表通りからちょっと外れた、千日前と堺筋の中間に当たる「ウラなんば」近辺。大阪出身のわたしにとって、なつかしくってたまらない。同時…

深夜食堂 監督/松岡錠司  感想

評判を呼んだ深夜TVドラマが3部あって全30話。監督に松岡錠司や山下敦弘、脚本に監督とゆかりの真辺克彦や向井康介、さらに先輩格に当たる荒井晴彦もちょこっと加わり、撮影(いい画だなぁと思うと、撮影・近藤龍人だったり)や美術もふくめて実力のある映…

思い出のマーニー  感想&考察

◇ぼっち少女の冒険。 この夏、アナとエルサの物語は、杏奈とマーニーの物語へと継承される。『アナと雪の女王』から『思い出のマーニー』へ。ディズニーからジブリへ。アンデルセン=デンマーク発の童話世界から、ジョーン・G・ロビンソン=イギリス発の童…

エスケイプ・フロム・トゥモロー 感想

LAのディズニーランドで無許可ゲリラ撮影したロー・バジェット映画でありながら、本国アメリカで訴えられることなく、劇場公開を実現させた話題のダーク・ファンタジー。きっと、ホラー映画によくある主観ショットを多用したフェイク・ドキュメンタリー形式…

ノア 約束の舟  感想

今春3月に公開されると、アメリカ、ロシア、オーストラリア、ブラジル、ドイツ、ペルーと全世界いたるところで歴代オープニング記録を塗り替え、すでに興収300億円を突破している、とは日本公開前の情報でした。キリスト教文化圏じゃない日本でも、公開16日…

トランセンデンス  感想

AI(人工知能)がもし自我を持ったら? というテーゼは、『2001年宇宙の旅』のHALコンピュータをはじめ、幾つものSF映画が先行してきました。いまや、チェスや将棋で有段者が打ち負かされるのはもとより、ソフトバンクの孫社長が、人間の声のトーンや表情の…

ゼロ・グラビティ  感想

これ、昨年暮れの劇場公開前に書いていながら、ネットに上げるにはいささかネタバレが過ぎるし、時が経って時期が来たら、もうちょっとディテール濃いめにリライトしよう……なんて思いつつ、放り出してしまっていたものです。『リリウム』の演出家・末満健一…

リンカーン 監督/S・スピルバーグ 感想

来春の米アカデミー賞の最優秀主演男優賞には『レ・ミゼラブル』のヒュー・ジャックマンに獲ってほしいと思っていた。いつぞやの同セレモニーの司会役でも、アン・ハサウェイを客席から引き連れる、というハプニングを装った粋な演出で洒脱なミュージカル・…

レ・ミゼラブル (ミュージカル)感想

お正月映画の目玉の1本、映画版のミュージカル『レ・ミゼラブル』(12月21日全国公開)は面白かった。満足感があった。舞台は東宝版を一度だけ観ている。その程度のライト・ファンだ。でも、スターシステムに依存していたころの日本のミュージカル・プレイ…

マリー・アントワネットに別れをつげて

今冬のお正月映画メジャー系は、『レ・ミゼラブル』(監督/トム・フーパー)『ホビット』(監督/ピーター・ジャクソン)『007 スカイフォール』(監督/サム・メンデス)と、それぞれが実績と実力のある監督が手がけた出来のよさで、各々見応えがあるのだ…

悪の教典  感想

今年は日本映画が例年より不作だった。同一時間が別視点でリフレインしてゆく青春映画の秀作『桐島、部活やめるってよ』が夏に公開されて、二転三転のサスペンスと皮肉が効いたロマンス・コメディの快作『鍵泥棒のメソッド』が秋に公開されて。あと、仇討を…

プロメテウス  ひとこと感想

リドリー・スコット監督のSF巨篇『プロメテウス』(8/24公開)の3D版を先週末に観た。同監督のここ10年ほどの不調が嘘のような面白さだった。H.R.ギーガーのデザインが全面展開してるので、どうしても『エイリアン』とのアナロジーで語りたくなる。第2…

わが母の記  感想(女優さん中心に)

◇前説 去年のいまごろは、女優になりたい女の子の一世一代の嘘=演技で内田伽羅(樹木希林の孫娘)が大人を揺さぶる、といった傍系エピソードまで忘れられない『奇跡』(監督/是枝裕和)、脚本上の設定に収まりきらない榮倉奈々や小西真奈美らの女優の幻惑…

篤姫ナンバー1  感想

いろいろ書きたいことはあるのだが、時に追い立てられてしまう。『篤姫ナンバー1』の完成披露試写のYouTube動画を観て、そういえばこれ観たよなぁと思い出した。わたしが観たのは完成披露ではなく、1週間ほど前の小さな地下の試写室で。備忘録めいたものだ…

王様ゲーム 熊井友理奈/鈴木愛理 感想

◇「若さ」という罰にシンクロする女の子◇ バタバタの仕事が中休みって感じでぽっかり開いた。普段から土日なんて関係ない仕事をしてると、こういうとき、時間の有効な使い方がわかんなくなり、結局寝て終わるのがオチ。六本木まで出向いて映画祭に行けばいい…

モールス  クロエ・モレッツ 感想

原作小説の「モールス」はすでに『ぼくのエリ 200歳の少女』というスウェーデン映画の傑作を生み落としていて、それについては《こちら》に書いた。そのハリウッド・リメークとなれば、大方はバジェットは大きくなっても出来は薄味の凡作というのがオチであ…

神様のカルテ 櫻井翔/宮崎あおい 感想

『白夜行』『洋菓子店コアンドル』に続く若き俊英・深川栄洋の監督作。今年もう3本目という多作ぶりだ。しかも、どれも水準を超えている。いろんなジャンルに挑戦しようという意欲と同時に、一貫して軽みの効いた語りの妙がある。ところどころ甘いなぁと思…

さや侍  監督・脚本/松本人志 感想

野見隆明演じる野見勘十郎は切腹の場にのぞんでも辞世の句を詠もうとしないが、映画を観終えると『さや侍』という作品が父となった松本人志の「辞世の句」のようにも思えてくる。これは不思議と後を引く映画だ。わぁ、ここんとこ下手っぴやん、って何度も突…

ヒアアフター  感想

『インビクタス 負けざる者たち』に続いてクリント・イーストウッドが監督に徹し、マット・デイモンが主演に名を連ねた最新作。わたしは昨年の秋の終わりにこれを観た。2ヵ月半ほども経ってからなにがしかを記そうとすると、大事なディテールが蘇って来ずに…

洋菓子店コアンドル 蒼井優 感想

監督は『白夜行』に同じく、まだ弱冠34歳の深川栄洋。すでに引く手あまたの感があるが、器用貧乏に収まらなければ、将来的に日本映画の中核を担う監督となるだろう。わたしは昨年の秋、『白夜行』に数日先だってこれを観て、物語のかまえ方が大ぶりの『白夜…

白夜行  堀北真希/高良健吾 感想

東野圭吾の13章からなる長篇小説をさて、どう約2時間半の映画にまとめてみせるのか。大長篇を映画にしようとすると、まぁたいていは原作の上っ面を絵解きしたダイジェスト版みたいになってしまう。むしろ短篇の行間を思いっきり膨らます、というやり方のほ…

犬とあなたの物語  感想

動物ものは苦手、動物そのものとして高貴なのに通り一遍に擬人化しちゃうのも、愛するフリして動物を手段にして安易に泣かせにかかるのも、客をみくびったつくり方やね、って思うことが多い。いまや動物ものというと洋邦問わずたいてい敬遠するようになった…

アンストッパブル  感想

主演デンゼル・ワシントン×監督トニー・スコットは、新作ができれば何はともあれ劇場に駆けつけたいハリウッドの黄金コンビですが、そのなかでいちばん面白いのは何かって問われれば、『マイ・ボディガード』か『クリムゾン・タイド』か、あるいはいっそ『デ…

2010年BEST5 外国映画 子供の時間篇

映画は「音」を獲得し、サイレントの「動く画」だけですべてを物語る独自の演出形式を一旦ふり捨てる、という映画表現としては「後退戦」を強いられるなかで新たな発展をとげた。そして「色」を獲得し、白と黒の諧調ですべてを描く豊かな撮影技法を一旦ふり…

2010年BEST5 外国映画 夢とうつつ篇

アート映画の興行の退潮が止まんないよね、と春先によく聞いた。意欲的だった独立系配給会社が昨年あたりから幾つもつぶれ、あるいは失速した。「エンターテインメント」万能の世か。アートアートと浮かれてるより、すぐれたエンターテインメントが評価され…

2010年BEST5日本映画 女のコメディ篇

ほんとは「女と男のコメディ」とすべきかもしれない。でも、どれを観ても男の印象度は薄め、に思えてしまうのは、「女はわからない」から余計惹かれるというこちらの興味のもち方ゆえか。「コメディ」といっても爆笑コメディとはかぎらない。お腹の底でくす…

2010年BEST5 日本映画 青春篇

〈青春篇〉といっても、青春を謳歌するいわゆる「青春映画」というくくりではない。わたしは青春にノスタルジアはほとんどないが、その時期につまずいた者として、何度もほとんど強迫的な力でそこに立ち返ってしまう。青春期の過剰さとかラジカルな動力をみ…

2010年BEST5 日本映画 文芸篇

バブリーな日本映画は大丈夫? と耳にして久しいが、原作や作者自身の知名度、TVの高視聴率にのっかっただけの、一過性のスカスカなしろものがメジャー作品に多いというにすぎない。シネコンの興行を独り占めする山の頂きと、山裾に二極化していて、一方が見…

女優五色豆 冬篇#1 クロエ・G・モレッツ

【『キック・アス』 監督:マシュー・ヴォーン 12/18公開】「ごしきまめ」は五彩の京のお菓子。ちっちゃかった頃、おばあちゃんが籐椅子に腰かけてぽりぽり食べてはった。夜中に仕事していてこのタイトルがひょいと浮かび、なら誰がいいかなぁ、「やりゃー…