身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

 雨上がりの日曜日 5/25(亀戸)

  • モリサキちゃんが心配していた雨も収まった。自転車で出かけるのにちょうどいい薄暑の日和。錦糸町のWINSでたしなむ程度のオークス馬券*1 を買って、ゆっくりともう一駅先の亀戸へ。わたしにとって散歩コースみたいなものだ。『ハロプロエッグ デリバリーステーション!04』の会場となる広場は、定刻の5時ともなれば座席を囲んで幾重もの人垣ができる。2階も手すり沿いに人がいっぱい。見上げると雨上がりのちぎれ雲が一面に波を打ち、埃を洗い落とされた大気に夕刻の雲間の光が膨らんで、自然の営為による間接照明のようにステージ周辺を明るませている。それがとりわけお姉さん組*2 の柔肌を、いつになく匂やかに肉感的に浮かび上がらせる。肌理のなめらかな凹凸や、血色のかすかな濃淡まで伝わってくるほどに。
  • どこまでも走る天馬にふさわしく田中杏里は空色、杜の都の生まれにふさわしく仙石みなみは翠色、好物はあんこ系ならなんでもと言うにふさわしく森咲樹は小豆色。それぞれ色違いの半袖シャツにマドラスチェックの同系色のミニスカート、それにたしか白のスニーカーという初夏らしい制服風衣装から、四肢がしなやかに伸び上がり、青春期の畏れと焦がれの熱を放出する。雲よ流れろ、夏はこの一角からはじまるぜぇ! とでもいうように「友情 純情 oh 青春」や「ここにいるぜぇ!」の拍節をきざみ、体躯はちぎれ雲のごとく波を打つ。亀戸サンストリートのイベントは音をじっくり聴くにはまったく不向きなのだが、その欠点を帳消しにする魅惑の時が、夕方の光のもと稀に訪れるのだ。
  • それにしても、どこか甘い土の匂いがするせんごくちゃんは屋外ライブの開放感がとてもよく似合うし、西念未彩ちゃんなんて広場をめぐる子供用汽車から飛び降りて、そのままステージに駆け上がってきたような風情だ。小川紗季ちゃんは歌とダンスが創るこの世界が好き、という感情を小さな体いっぱいにあふれさせていたし、和田彩花ちゃんは照れ屋の自分からひとつ超え出るように、ステップを踏みつつ真っ直ぐな視線をこちらに向けてくれた。わたしはひいきのモリサキちゃんをつい眼で追ってしまうのだが、今回その目線の隅に決まって田中杏里が見切れていて、彼女のほうに焦点を移してしまうこともしばしば。
  • ふたりのパフォーマンスの対比がやたら面白かった。モリサキが誰よりも大ぶりに、自己流のくねっとした“色気もどき”を撒き散らして踊るのに対し、アンちゃんは細い線でメリハリをきかせて踊る。モリサキちゃんのサービス過剰というか無駄なエンターテインメント精神がわたしは好きなのだが、「ここいる」の足の跳ね上げ方などアンちゃんはきりりと美しい。森咲樹の魅力が“過剰”や“無駄”にあるとするなら、田中杏里の魅力は切り詰めた無駄のなさにある。「女の脚はバランスよく地球を計るコンパスだ」。トリュフォー後期のコメディ『恋愛日記』の、女たちの脚を愛して逝った小男の口上がふと浮かんできた。長い黒髪の肩下部分にウェーブをかけてすっかりクール・ビューティになった田中杏里は、しゃきっと精確なコンパスの舞いを思わせる。地球を直線的にまたいで計測し、円運動によって触診するような。なにげに歌も安定している。
  • マイクの調子かノドの調子か、今回のモリサキは歌がほとんど聞こえてこなかった*3 が、童顔の人なつこさと媚態のしつこさ、という『中野ブロンディーズ』で磨きをかけたアンバランスな合わせ技、そのいびつなフォルム感は健在で、観ていて心が躍った。さすが桃子リスペクトの第一人者! 舞台裏で仲良しだった*4 北原沙弥香吉川友がユニットを組んで注目されたばかりなので、置いてきぼりの思いを味わっていないか、ちょっと心配していたのです。とまれ、今回の6人によるパフォーマンスのアンサンブルは、わたしが観た過去の3回のデリステ体験*5 のなかでいちばん五官を刺激してくれた。雨上がりの夕刻の明るみという天の配剤も味方して。

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*1:ヤン土でも話題になっていたジャンポケ産駒トールポピーは1着固定で当たったが、2着、3着を外した。距離の壁を思ってか、まるで人気薄だった桜花賞の1、2着馬を、周囲の雑音を廃して素直に押さえていれば。40万馬券かぁ。かなりくやしい。

*2:田中杏里仙石みなみ森咲樹のお姉さん組と、西念未彩和田彩花小川紗季妹組が、上手・下手に分かれたりくっついたりして踊ることが多かった。ほんとはモリサキよりさいねんのほうがちとお姉さんなのだが。

*3:本人は凹むこともあるが反省すべきは反省して次につなげる、という趣旨をブログに記している。

*4:モリサキがいじられ役みたい。詳細はエッグDVDパンフレット参照。

*5:01は観ていない。