身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

2010-01-01から1年間の記事一覧

2010年BEST5 外国映画 子供の時間篇

映画は「音」を獲得し、サイレントの「動く画」だけですべてを物語る独自の演出形式を一旦ふり捨てる、という映画表現としては「後退戦」を強いられるなかで新たな発展をとげた。そして「色」を獲得し、白と黒の諧調ですべてを描く豊かな撮影技法を一旦ふり…

2010年BEST5 外国映画 夢とうつつ篇

アート映画の興行の退潮が止まんないよね、と春先によく聞いた。意欲的だった独立系配給会社が昨年あたりから幾つもつぶれ、あるいは失速した。「エンターテインメント」万能の世か。アートアートと浮かれてるより、すぐれたエンターテインメントが評価され…

2010年BEST5日本映画 女のコメディ篇

ほんとは「女と男のコメディ」とすべきかもしれない。でも、どれを観ても男の印象度は薄め、に思えてしまうのは、「女はわからない」から余計惹かれるというこちらの興味のもち方ゆえか。「コメディ」といっても爆笑コメディとはかぎらない。お腹の底でくす…

2010年BEST5 日本映画 青春篇

〈青春篇〉といっても、青春を謳歌するいわゆる「青春映画」というくくりではない。わたしは青春にノスタルジアはほとんどないが、その時期につまずいた者として、何度もほとんど強迫的な力でそこに立ち返ってしまう。青春期の過剰さとかラジカルな動力をみ…

2010年BEST5 日本映画 文芸篇

バブリーな日本映画は大丈夫? と耳にして久しいが、原作や作者自身の知名度、TVの高視聴率にのっかっただけの、一過性のスカスカなしろものがメジャー作品に多いというにすぎない。シネコンの興行を独り占めする山の頂きと、山裾に二極化していて、一方が見…

女優五色豆 冬篇#1 クロエ・G・モレッツ

【『キック・アス』 監督:マシュー・ヴォーン 12/18公開】「ごしきまめ」は五彩の京のお菓子。ちっちゃかった頃、おばあちゃんが籐椅子に腰かけてぽりぽり食べてはった。夜中に仕事していてこのタイトルがひょいと浮かび、なら誰がいいかなぁ、「やりゃー…

娘。コンサートツアー2010秋 JCB夜

「ライバル サバイバル」ツアーのホールコン最終回、オーラスの横浜アリーナには這っても逆立ちしても直立歩行でも行けないので、これが卒業する亀井絵里ちゃんとジュンジュン・リンリンの娘。としての見納めともなる。娘。コンは去年の春以来か。あのとき、…

ハロプロ新人公演11月 横浜JUMP! 28夜

おそらく「新人公演」と銘打たれるエッグたちのラスト・ライブとなるのだろう。あるいは「ハロプロ・エッグ」という概念も消滅するのか。いくら追いつめられてもこれに行かないわけにはいかず、仕事の資料一式を鞄に詰めこんで、徹夜覚悟の横浜行脚となった…

大相撲 63連勝の剣が峰 白鵬×稀勢の里

11月15日、九州場所2日目の大相撲は、がらがらの館内をあざわらうようにめっぽう面白かった。といっても、仕事からいっとき解放されてNHKの7時と9時のニュースで横着に観ただけなのだが、ニュースウォッチ9は(あとちらっと観た報道ステーションも)…

今がいつかになる前に 寄り道的感想

10月最後の週のはじめ、不規則生活と突然の寒気がたたって体が悲鳴を上げ、夜中から明け方まで七転八倒して行きつけの医院に駆けこむ。こんなこと繰り返してたら即入院だな、と老医に静かな口調で恫喝される。目前の仕事の山場を青息吐息で乗り切って、金曜…

乱暴と待機  小池栄子、美波 感想

原作は演劇と文学を往還する本谷有希子で、みずから舞台にも小説にもした。わたしは2ヵ月ほど前に映画を観たのみ。それがまだ尾を引いている。日本映画は秋からお正月にかけて、なんの因果かにわか時代劇ブームで、力作と凡作の幅はあれど、総じて悲愴美に…

表に出ろいっ! 作・演出/野田秀樹 感想

一幕一場、ある宵の口の家庭内戦争。大地と垂直に交わるような『春の祭典』が忘れがたい亡き演出家&ダンサーの名を冠した、愛犬ピナ・バウシュが今夜にもお産を迎える。中村勘三郎扮する父に野田秀樹扮する母、その年頃の娘、3人とも今夜は大事な予定を入…

君に届け  多部未華子 感想

多部未華子の映画なら、弟をからかいながらの学校からの帰り道、通りの辻でふと見慣れた風景が変わって家に着くともぬけの殻、両親からはぐれちゃうというパラレルワールド的設定を、自立の辻に突然立たされる女の子の青春ジュブナイルに取りこんだ佳品『ル…

悪人  深津絵里 感想

この秋の公開作で、ここから見知らぬどこかへと針を振り切る手応えのあった日本映画は、新人女優・寉岡萌希のみなし児の輝きに目を奪われる瀬々敬久監督4時間38分のサーガ『ヘブンズ ストーリー』、本谷有希子の演劇と富永昌敬の映画が変種のセックス・ウォ…

ぼくのエリ 200歳の少女  感想

これを観てもう1ヵ月以上経ちますが、まだ印象は鮮烈なままです。今日が公開初日(銀座テアトルシネマほか)となります。原題は『LET THE RIGHT ONE IN』。監督いわくモリッシーの「LET THE RIGHT ONE SLIP IN」からとったそうですが、日本語にすると「正し…

借りぐらしのアリエッティ 感想

ジブリ作品に詳しいわけじゃないけれど、宮崎駿さんや高畑勲さんが自分たちより若い世代に監督をゆだねた映画の系譜がありますよね。『海がきこえる』とか『耳をすませば』とか『猫の恩返し』とか『ゲド戦記』とか。そこに『借りぐらしのアリエッティ』を連…

さんかく (小野恵令奈、田畑智子) 感想

真新しい胸の刻印をこのブログになんとか留めておきたいなって思いつつ不規則生活の身の上に足をすくわれ、結局、書けないまま時が過ぎていった作品がいくつもある。この春3月に池袋の東京芸術劇場小ホールで観た多部未華子主演の『農業少女』(作:野田秀…

怪談新耳袋 怪奇「ツキモノ」「ノゾミ」 感想

どきどきした。第一話『ツキモノ』と第二話『ノゾミ』がみごとな対照を成している。動のなかで身動きがとれなくなる一話、静のなかで脈打つものがある二話。世界が干からびてゆく一話、よどみのなかで沈んでは浮かぶ二話。青みの凍みる一話、赤みの沁みる二…

星砂の島のちいさな天使  感想

表バージョン ある朝、竹富島の砂浜に打ち上げられた謎のヒロイン美海(飯田里穂)はファンタジー界の血を継いでいる。とするなら、ヒロインと人魚伝説のつながりを直観的に見ぬき、あの女に近づくのは悲劇の元だよって幼なじみの瞬一に伝えようとする島の中…

タイガーブリージング 感想 完結篇

唇 上手は三姉妹が暮らす暖かい芥子色のカウンターキッチン&リビング。下手は賊らしき連中と女子高生がうごめく灰青色のメゾネット。奥の階段で中二階に通じていて、この目隠しされた小空間がいっそう怪しげです。映画なら覗く側(上手)と覗かれる側(下手…

タイガーブリージング 5/8 昼一回目(新宿)

光 一見、脳天気なほど屈託のない人間が追いつめられ、一寸先は奈落という危機に陥り、心がポキンと折れるかにみえて、五里霧中のなかまばゆい曙光と化して立ちはだかる。石川梨華はわたしが知るかぎり、そういう役を演じてきました。憎くてたまらない敵が恋…

金色のコルダ 3/24 夜 千穐楽(天王洲)

「選ばれたひと」であるはずの香穂子が、心のまま練習なしにヴァイオリンが弾けるという特殊能力を「魔法」によって与えられただけの「にせもの」だと自覚し、私は「にせもの」という意識に苦しみはじめる。それを全身でわななくように演じきった第二幕の森…