身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

演劇

TRIANGLE −トライアングル−《β》 感想

BS-TBS「トライアングル・ナビ」を観て、行く予定のなかったミュージカル『トライアングル』のチケットを急きょ手に入れる。αかβか迷った末、工藤遥が主役を張るバージョンらしきβを選ぶ。役者・工藤遥とは彼女の初舞台作『今がいつかになる前に』以来、偶然…

LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇- 6/14夜

心臓を射ぬかれました。血のようにこごった思春期特有の無限の「いま」がふと澄みきり、さざなみを立てる。そんな上質のリリシズムが、退屈まぎれの騒動をも出口なき悲劇をも、通奏低音のように貫いています。学生時代に信州の山すそで読んだ萩尾望都の「ギ…

ステーシーズ 少女再殺歌劇 考察(結)

幽霊と啓示――詠子とモモとドリュー、ステーシーたち 『クラムボンはわらっていたよ。』 『クラムボンはかぷかぷわらったよ。』 『それならなぜクラムボンはわらったの。』 『知らない。』 つぶつぶ泡が流れて行きます。 蟹の子供らもぽつぽつぽつとつづけて …

ステーシーズ 少女再殺歌劇 考察(五)

死なないという約束――再び、詠子と渋川 水曜夜はスマイレージ主演の『怪談 新耳袋 異形』の最終試写とかぶっていたけれど、田中れいな・鞘師里保・工藤遥出演の「『ステーシーズ』USTステージ コメンタリー」のほうを選んでしまう。彼女たちからコメントを引…

ステーシーズ 少女再殺歌劇 考察(四)

「あるがまま」のレッスン――ドリューと祐助 どっどど どどうど どどうど どどう 青いくるみも吹きとばせ すっぱいかりんも吹きとばせ どっどど どどうど どどうど どどう (宮沢賢治『風の又三郎』巻頭) くどぅー、またはどぅーこと工藤遥はまだ12歳なのに…

ステーシーズ 少女再殺歌劇 考察(三)

ゾンビリバーの濁流にゆられて――砂也子とモモ 石田亜佑美演じる砂也子は、恋人・祐助がかくまう女子高生のステーシー、原作ではほんの端役に過ぎない。砂也子を詠子・モモ・ドリューと並ぶ第四のヒロインともいえる重要な役に膨らませたのは、この舞台が原作…

ステーシーズ 少女再殺歌劇 考察(二)

しゃべるステーシー ――モモと有田 大槻ケンヂ著『ステーシー 少女ゾンビ再殺談』の首胴尾の胴体部分をなす「ステーシーの美術」は、全寮制女子美術学園の廃墟化した体育館や校庭で、13体の動く屍少女=ステーシーをロメロ再殺部隊が次々に切り刻む血祭りの場…

ステーシーズ 少女再殺歌劇 6/9夜

前説――そして、詠子と渋川 土曜の夜、西新宿地下のコーヒーショップでひとり、たったいまスペースZEROの客席で浴びたばかりのの銀色の鱗粉と、ハーブティと血の香りによる酩酊状態をどう醒ませばいいのか計りかねて、買い求めたパンフを読み込んだりとっ散ら…

ラヴ・レターズ 2012 3/12 感想

真野恵里菜と鈴木裕樹によるリーディング・ドラマを観た。場所は渋谷のパルコ劇場。女優・真野恵里菜と演出・青井陽治という組み合わせが新鮮で、なんの予備知識もなく観に行った。実に野心的な、歯ごたえのある「読む劇」だった。じんわりと心を動かされた…

ダンス オブ ヴァンパイア 12/22 感想

愛とポランスキー 帝劇は春に『レ・ミゼラブル』を観て以来。年末の〆切地獄をぬっての観劇となりました。わたしが『ダンス オブ ヴァンパイア』を待望していたのには、ふたつの要因があります。ひとつはもちろん、宝塚とコラボした『リボンの騎士』のサファ…

リボーン 10/10夜 (西新宿) 感想

観る予定がなかったけれど、○○○に観せてもらった。思わぬ拾い物といえる楽しさでした。新宿副都心の全労済ホール/スペース・ゼロの館内に入ると、富田勲作曲の懐かしい「リボンのマーチ」が響いてきて、まずびっくり。TVアニメ『リボンの騎士』の、たしか…

ミュージカル ドラキュラ 9/5 感想

居座り台風が列島に爪痕を残して去った後、今度は一度去った夏が居座り続けている模様。そんななか、不測の事故含みの仕事漬けに、この10日ほども猛スピードで過ぎ去った。先週の月曜にミュージカル『ドラキュラ』〈オーストリア・グラーツ版〉を東京国際フ…

らん―2011(吉祥寺前進座劇場)感想

乱のなかの蘭――大輪の美剣士、矢島舞美 5月27日、金曜日の夕方、いまにも雨が落ちてきそうな空を仰ぎつつ、吉祥寺へ『らん』を観に行く。少し前まで少々雨に濡れても平気だったのに、どうしても放射能のことが脳裏をよぎってしまう。バカラックの「雨にぬれ…

ハムレット(&ロズギル) 補遺

この1週間、仕事のトラブルを引きづってしまった。消耗仕事ではなく、トラブルに分け入る手応えがあったのが救いだったが、まだ結果は予断を許さない。そんな合間合間、渋谷のさくらホールで1週間あまり前に観た『ハムレット』のことに思いをめぐらし、1…

ハムレット 長谷川純/高橋愛 考察と賛辞

長谷川純のハムレットと高橋愛のオフィーリアの美質は、まず第一に「若さ」だ。いたらないことに苦しみながら「さなか」を生きる若さ。エロキューション(台詞回し・口跡)の美しさをいちばんに求めたいなら、ローレンス・オリヴィエやジョン・ギールグッド…

ハムレット(渋谷さくらH)外周的考察

「ハムレット」はシェイクスピアの戯曲のなかでもっとも長いものらしく、ものの本によると完全上演は不可能と断りつつ、6時間近くかかると予想している。今様にスピードアップを図っても、4,5時間かかるといわれる。近年ではケネス・ブラナーの映画版『…

喜劇「ハムレット」悲劇?「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」5/19(渋谷) 前口上的感想

ハムレット&ロズギル、プレビュー翌日の初日を渋谷さくらホールで観る。観劇前に少し時間が空いたので購入していたちくま文庫版「ハムレット」(この劇と同じ松岡和子訳)を第二幕まで読み進む。芝居を観てすぐに感想をあげようとするも、文庫本をさらに読…

今がいつかになる前に 寄り道的感想

10月最後の週のはじめ、不規則生活と突然の寒気がたたって体が悲鳴を上げ、夜中から明け方まで七転八倒して行きつけの医院に駆けこむ。こんなこと繰り返してたら即入院だな、と老医に静かな口調で恫喝される。目前の仕事の山場を青息吐息で乗り切って、金曜…

表に出ろいっ! 作・演出/野田秀樹 感想

一幕一場、ある宵の口の家庭内戦争。大地と垂直に交わるような『春の祭典』が忘れがたい亡き演出家&ダンサーの名を冠した、愛犬ピナ・バウシュが今夜にもお産を迎える。中村勘三郎扮する父に野田秀樹扮する母、その年頃の娘、3人とも今夜は大事な予定を入…

タイガーブリージング 感想 完結篇

唇 上手は三姉妹が暮らす暖かい芥子色のカウンターキッチン&リビング。下手は賊らしき連中と女子高生がうごめく灰青色のメゾネット。奥の階段で中二階に通じていて、この目隠しされた小空間がいっそう怪しげです。映画なら覗く側(上手)と覗かれる側(下手…

タイガーブリージング 5/8 昼一回目(新宿)

光 一見、脳天気なほど屈託のない人間が追いつめられ、一寸先は奈落という危機に陥り、心がポキンと折れるかにみえて、五里霧中のなかまばゆい曙光と化して立ちはだかる。石川梨華はわたしが知るかぎり、そういう役を演じてきました。憎くてたまらない敵が恋…

金色のコルダ 3/24 夜 千穐楽(天王洲)

「選ばれたひと」であるはずの香穂子が、心のまま練習なしにヴァイオリンが弾けるという特殊能力を「魔法」によって与えられただけの「にせもの」だと自覚し、私は「にせもの」という意識に苦しみはじめる。それを全身でわななくように演じきった第二幕の森…

端っこの桃。

更新してもいないのに土曜の夜からやけに来訪者が多いなぁと思っていたら、『サンクユーベリーベリー』のごく個人的な感想が作・演出の塩田泰造さんによって大人の麦茶《ムギムギデイズ》のブログに、庭の柿の話題をマクラにした温かい文章に挟んでリンクさ…

2009秋季エッグ研修発表会 女優宣言 10/7

エッグ女優宣言の[仙石・吉川・佐保・関根・新井]の回(20:00)に行ってきました。その感想をメモ風に。30分でなにをやるのか、ハンパなもんになんなきゃいいが、と気がかり半分だったけど、楽しかったなぁ。なるほど、研修発表会というにふさわしい、余計…

サンクユーベリーベリー 9/21夜(池袋)

「はるなつーっ♪のツーッ♪が好きだからって、ツーッ♪で止めちゃったら歌じゃなくなる」と嗣永桃子演じる眞佳ちゃんが言うように、葉脈が波打ちながら青・青緑・緑・深緑の諧調をなすシンメのセットに繰り広げられる、この音楽劇の感想を言葉でつなぎ止めよう…

しゅごキャラ! ミュージカル 7/20(銀座)

「なんか抜け殻状態……憂佳です」ではじまる、あむ役・前田憂佳の楽日明けのブログには胸を打たれた。あんなに長かった稽古も思いかえすとぎゅっと濃縮されて感じる。「ぶっちゃけ、憂佳 稽古行くの、嫌でした。自分が主役なんて 絶対無理だって 自信が全然な…

オペラ・ド・マランドロ 考察〈急〉

MAX「発展なんかいらねぇ」 LU「もう時が来たのよ!」 『オペラ・ド・マランドロ』は『三文オペラ』より人物関係もかなりすっきりと整理されている。その最大の異動は、『三文オペラ』ではほとんど絡むことのなかったルー(=ポリー)とマルゴ(=ジェニー)…

オペラ・ド・マランドロ 考察〈破〉

『オペラ・ド・マランドロ』は言うまでもなくブレヒトの『三文オペラ』の猥雑な世界を南米ブラジルに移植すべく翻案したミュージカルだが、産業革命末期ロンドンの魔界に1920年代ベルリン爛熟都市の匂いを重ねた『三文オペラ』もまたイギリスの『ベガーズ・…

オペラ・ド・マランドロ 8/1昼(池袋)雑感

あるいは、ルーをとっかかりにした一考察〈序〉 純情可憐な令嬢が銃をかまえるとき、それは命に賭けてあんたのいいなりにはならないわ、という発火点だ。相手がちんけな悪党なら、力関係が一瞬で逆転するだろう。相手が愛する男なら、やがて男にとって危険な…

『三文オペラ』書きあぐねたこと(再考)

『三文オペラ』には「海賊ジェニー」というクルト・ヴァイルの名曲がある。宮本亜門版では、盗品で飾りたてた馬小屋での結婚式の場面だったろうか、ちょっと女体風(?)の横長のテーブルにピカソの「ゲルニカ」をあしらったテーブルクロスが掛けられて*1 宴…