身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

端っこの桃。

  • 更新してもいないのに土曜の夜からやけに来訪者が多いなぁと思っていたら、『サンクユーベリーベリー』のごく個人的な感想が作・演出の塩田泰造さんによって大人の麦茶《ムギムギデイズ》のブログに、庭の柿の話題をマクラにした温かい文章に挟んでリンクされていました。*1 それに気づくちょっと前、1回だけ行ける予定の座間のBerryzコンに備えて今年の春公演『そのすべての愛に』DVDをわたしはチェックしていて、清水佐紀嗣永桃子須藤茉麻のMCにハッとしました。みやびちゃんの隣をよくちなみと取りあうので徳永千奈美が私のライバルだって清水佐紀が打ち明ける流れに、それより桃を取りあうようにしてみればと嗣永桃子がちゃちゃを入れて会話が紛糾ぎみとなり、「桃はとにかく“はじっこ”に行くんです、いつも」と須藤茉麻が大らかにフォローするくだり。
  • このDVDには『サンクユーベリーベリー』劇作の発想やキャラクター造型のヒントになったとおぼしきポイントがいくつかあるのですが、とりわけここんところ――「すみっこが落ちつくの」と嗣永桃子が小鳥みたいに小首をかしげてつぶやいてから、普段のキャラに合わないことを発しちゃった照れ隠しか、ふへへへって笑うすごく印象的なシーンがあります。わたしの思い込みを承知で言ってしまうと、“はじっこ”でひっそり暮らしながらひととひとの間中に立ってつなぎ役になる眞佳というキャラクターが芽を吹くための、触媒の場に立ち会ったような気にそれを観てなったのです。ムギムギデイズの更新はそれから間もない発見だったので、二重のうれしさがありました。塩田さんが稽古の進展とともに更新されていた期間限定サンクユー・ブログの喚起力のある言葉たちを、購入したパンフへキャラクターごとにメモ書きする作業からあの小文は出発したんだってことも、感謝に添えて付け加えさせてください。
  • 座間のハーモニーホールは駅から遠いけど、近くにクヌギやコナラの森を擁した県立公園があるので、年に一度くらいここを訪れると時間に余裕をもたせて遠回りします。秋の空は高く、西陽をいっぱいに吸いこんだ雲が弧をなして薄桃色の肺腑を下界にさらしています。位置感覚を失ったまま森の小道から抜けだすと、そこはホール前の大通りで、『Berryz工房コンサートツアー2009秋 目立ちたいっ!』開演もう間近。青や赤の星がまたたく流星ボーイの世界へ一気に引き連れられました。アバンタイトル後のオープニングVTRは、誰もいないステージの一角をスポットライトが照らすなか、影アナがメンバーの幼児期からデビューに至る写真を紹介してゆく新趣向。嗣永桃子の意外な一面が覗ける、「おとなしくて、うれしいとなぜか無表情になる、笑ってる写真を探すのが難しいくらいで、目立つことの快感を覚えたのはつい最近」というのは、まるで眞佳の幼少期の紹介ナレーションみたいでした。
  • 6、7曲目で丸富合唱部が次々に登場し、8曲目で新旧弁天合唱部が集い、夏焼雅熊井友理奈のクールな挑発ダンスや、形のいいおでこに振り乱した黒髪が月ノ輪みたいにくっつくさまが葉子のようにりりしく色っぽい須藤茉麻にみとれていると、次の佳曲『青春大通り』では7人のリリカルなユニゾンとなり、激しさを秘めた学子さながらに早くも菅谷梨沙子が感極まってしまいます。それに共振れするように、こっちまで涙がにじんでくる始末……。ダンス・ナンバー「ジンギスカン」は途中からボイパ・バージョンに変容します。徳永→清水→夏焼のリズム隊を基点に、コーラスが乗り、音が厚みを増しつつその共鳴空間を菅谷梨沙子のボーカルが涼しげに、ときに苦しげに遊泳してゆく愉しきスリルとサスペンス。 ベリコンは去年の秋あたりから定番路線のなかに冒険路線の新機軸を打ちだすようになって、いま充実の一途です。ひとところに留まらず動き続けるその未完の「過程」が充実しています。

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*1:あるささんからも、リンクを通じて来たとコメント欄で報告をもらいました。