身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

ドリーム・ガールズ,ガールズ・ドリーム

  • 寝苦しさが尾を引いて息苦しい夢に目覚めた後、二度寝したら、こんな夢を見た。ハロプロ系の盛大な野外イベントがクライマックスに差しかかっている。わたしはイベント・スタッフのひとりか何からしい。藍色がかった宵の口の空に花火が上がり、安倍なつみが感極まって賛嘆の声を上げる。なぜか女性比の高い観衆がそれに呼応する。その嬌声の向こう、丘になった芝生を小さな女の子(一瞬男の子かとも思う)が歩いている。豆粒大の遠近感だが、うつむき加減にとぼとぼという感じが伝わってくる。ある予感にかられて駆け寄ってみる。福田花音だ。彼女は落ちこみ泣きはらした目で訴えてきた。「私はカヤの外、こんなにハローのことを思っているのに……」。いつもお日様みたいな花音らしくないよ、とわたしはショートカットの頭を抱えこみながらクシャクシャと撫でた。先輩たちがいかに花音の将来性に一目おいてるか、今からでも遅くない、アドリブを効かせてどういう仕掛けをすれば花音ちゃんはわかってくれるだろうか? 舞台ソデからそっとなっちに頼もうか、と自分に問いかけながら。かたわらを通りかかった矢口真里が怪訝な顔をしてそれを見ていた。
  • そこで夢は覚めた。悪い夢じゃなかったが、未知のほうへと踏みだそうとして踏みだせない少女の不安やもどかしさ、その不安に共振れするばかりで支えきれない自分の不甲斐なさ、といった感覚の苦みが、夢のあとに強く残った。花音ならきっと大丈夫。「ゆうかのん」の前田憂佳にも「へんりかず」の小川紗季にも後輩の真野恵里菜にもソロの機会の先を越された。でもね、娘。はもともとエースになれない二番手たちの集団だったんだよ。花音ちゃんがリスペクトするなっちなら、そう励ましてくれただろうか。いや、二番手の心情なら、夢のなかでおもむろに登場したやぐっちゃんにこそ話を向ければよかったか? そんなあれやこれやが、寝起きの半覚醒状態のなかで経めぐった。
  • 他愛ない対決ごっこにしろ、福田花音森咲樹の最近の急接近には心がざわざわする。モリサキもまた、年上にはしっかり者と信頼され年下の面倒見もよいエッグの中堅のカナメ北原沙弥香――最大のライバルにして親友と自認していたさぁやに先を越された。しかも、舞台裏ではモリサキ・さぁやと仲良し三人組みたいだった、後輩の吉川友ともどもにかっさらわれた格好。ツブログや咲樹色でHigh-KingMilkyWayのことがちょっと話題になると、ちゃんと応援してるよ、というそのさりげない手つきにいくらか胸が痛くなる。わたしの見た夢はその反映だろう。花音と咲樹、“フラワー・ブロッサム”(花・咲)とでも呼びたいこのコンビはちっこいのとタッパがあるの、辛いモノ好きと甘いモノ好きなど一見正反対のようで、意外と似たもの同士かも。きまじめで研究熱心。でも、お調子者。誰よりも大きく踊る。その踊りがどこかバランスを欠いている。そこに巧まざるユーモアがある。文章を書くのが好き。ファニーフェイス。とくにモリサキは、往年のオードリー・ヘプバーン*1 が得意としたようなロマンティック・コメディが似合いそう。
  • ここんとこ、先行者の花音に競うようにブログ更新を続けているモリサキちゃんだが、「実は朝ブロしてます 電車のなかでね♪」なんて書かれると、それが朝ブログのフェイクだと気づいていても、通勤・通学ラッシュのなか、朝の光と木立の影の明滅を上気した頬や首筋に映してのほほんと風呂につかる森ティの映像が、意識の湯気のなかからおのずと浮かんでくるわけで、その言葉の煽動力にまんまとしてやられる。うろ覚えだが、眠れないときのこととして、モリサキは以前こんなふうなことも書いていた。羊を数えてみると、左右に羊小屋、真ん中に柵があって1頭1頭左から右へ飛び越えるうちはいいのだが、そのうちいっせいのせ! って67匹くらいがわれがちに柵を跳び越えちゃう、その壮大な光景に余計眠れなくなるんだと。頭のなかのイメージ喚起力が強くてロジカルな思考を踏みつぶしてしまう。ピンク・キャラの一方で、「ブラック咲樹」の異名をもつのもわかる気がする。おもろい子だ。
  • 眠りといえば、数日前には松浦亜弥の夢を見た。年代物の円形の大天井に張りだしたバルコニーみたいなところから体を乗りだし、下界を見下ろすようにあややはバラードを歌っていた。ちょうどサーカスのブランコ乗りを見上げるような姿勢で、わたしたちは口をぽかんと開けてあややの歌に聴き入った。歌の哀歓はうねるように大伽藍に響きわたり、わたしの胸に染みわたった。それとともにあややは天女のような軽さで、あるいは関西系のグレート・マザーのような量感でわたしたちの真上、つまり眼前に漂い降りてきた……。あややのファンクラブイベントが歌を聴かせることに徹した新機軸だった、と幾つかのレポで読んで、あれは予知夢だったか? とわたしは思ったが、それにしても、7月は厄介な仕事に集中して乗り切らなければならないのに、どうしてこう普段はめったに見ないハロプロの夢を見てしまうのか。まるで、忘れた頃に連絡がくる腐れ縁の女友達みたい。
  • 矢島舞美はラジオ『CutieParty』で1日に3つくらい夢を見て、それを全部覚えてる、と語っていた。走る夢ばかりというのが舞美ちゃんらしい。舞美はなぜか東京ドームにコロコロ(彼女の言い方だとゴロゴロ)をかけていて、ちっちゃい女の子にそれを貸してあげる。貸したとたん、ちっちゃい子は巨大化してコロコロでつぶそうと追いかけてくる。舞美は走って逃げる。振り向くと、女の子の顔がキツネみたいな木彫り人形の顔になってる。イヒヒと笑いながらなお追いかけてくる。これは夢だ、起きろ、起きろ、と言い聞かせパッと眼が覚めるとそこは自分の部屋。部屋の周りからなおイヒヒと聞こえてくる。体が重くて起き上がれない。必死で逃げだしてお母さんの肩をたたくと、それも木彫り人形の顔。お兄ちゃんの肩をたたくとそれも……。夢から覚めるとそこもまた夢だった、というエンドレスの逃走夢! 女の子の夢のなかに現れ、彼が夢で負わせた傷は夢から覚めても消えない『エルム街の悪夢』のフレディなみに怖いかも。こっちは、なんかエースの孤独を感じさせる夢だなぁ。太陽の笑みをもつ陽気なパフォーマー矢島舞美とのギャップに、ひどく心を動かされた。

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*1:「ファニーフェイス」の代名詞だったオードリーには、その名も『ファニーフェイス』(日本題は『パリの恋人』)という洒落たミュージカルの佳品がある。オードリー自身、吹き替えなしで数々の歌にも挑んでいる。