身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

ハロテンPARTY2 オーラス 3/22夜(台場)

  • 真野恵里菜はラジオのパーソナリティをソロでやらせてもイケてることを『ハロプロやねん』の特別復活版で知った。トークも悪くないし、「もしもシリーズ」の成りきりコントが面白すぎ、可愛すぎ。「はいOK」後に思わず本人がふきだしちゃうところまでOAに使っていて、これはディレクターのお手柄ですね。……なんて未知の“才の芽”に走りがちなわたしは、ほうっておくと真野ちゃんやエッグのほうについ目がいってしまうが、エルダー組12人が集結したハロプロ感謝祭ファイナルのぶっちゃけ満載の楽しさには唸らされた。ハロ系イベントの頂点といえば、わたしが目撃したなかでは2年前の娘。10周年スペシャル『中澤裕子安倍なつみMemorial Party』がひとつもふたつも抜けていた。「愛の種」にはじまる歌のデュエット+掛け合いの想い出ばなしが興にのり、このまま夜を徹するかと思うほどこんこんと湧いてくる感じで。途中からゲスト参加の二期メン矢口と保田が、いつまで待たせるのよぉと呆れるほどだった。今回のイベントはハロプロ卒業直前最後の顔見せ的な意味合いから参加メンバーが多く、あの神イベの凝縮力には及ばないものの、その分、最後のパーティだからなにしゃべってもOKの無礼講、といったカオスな面白さに充ちていた。
  • ハロプロを好きになってまだ3年と言っていた隣の女性が不審に思うくらい、わたしはガハハと笑い、涙を流した。その起爆装置になってくれたのが吉澤ひとみだ。「あんなことやこんなことや変なことまで」気遣いなくお届けしたい、という中澤裕子の音頭を皮きりに、過去へのマイナスのこだわりは一切捨てたといわんばかりの傍若無人な快活さでよっすぃーは爆弾を投じる。ミニモニ。は子供のお守りが大変だったって矢口真里の話に「あの頃はジャンプが大変だった」って辻希美が「大変」つながりで話をズラすと、アイーンダンスの連想からそれがデブネタのことだと真っ先に気づいた石川梨華が「たしかにひとりだけカラダ重そうだったね」と引きつぐ。すかさず吉澤ひとみは「すごい気持ちわかるわぁ、幸せですか♪のときとか、あのへんすごぉいから」ってたたみかける。で、小川麻琴をも引きこんでにわか懺悔大会に。会場は笑いの渦と化す。「衣装さん、何度も直してもらってごめんなさい」と辻ちゃんのダメ押し。「ほんとうに申し訳ございません。もうお弁当が美味しくて」とよっすぃーも自虐のダメ押し。その吉澤さん、ガッタスネタでは、「最近、石川さん息切れがひどいようで」と隣にふり、「もう2年くらい前からね」って梨華ちゃんが応じると、昔はチェンジの合図が監督からあってもなかなか外に出なかったのに、いまは自分から交替しちゃうと相棒のヘタレぶりをからかう。でも裕ちゃんとは「干支が一回り違う」っていう梨華ちゃんの年齢ネタには、「姐さん、やっちゃってくださいよ」って相方を生け贄に差しだす。
  • 極めつけは最後の挨拶で、「埼玉出身のひとりの男の子が……」と言い間違えて圭ちゃんにここいちばんの暴露だねって突っこまれ、よっすぃーらしいラフなジーンズ姿(イントロクイズの「青いスポーツカーの男」の歌いっぷりが似合った)で照れまくって「右も左もわからない女の子が」と言い直す。疑惑のえぇーーっの大合唱には「なんなら確認する?」。裕ちゃんらがあわてふためくと「ダメダメ、アイドルだもん」って自分に切り返し、それがなんともお茶目だった。隣の梨華ちゃんもさすがだ。「こんなにフツーの女の子が」と「女の子」を強調したところから語りはじめ、「いきなりトップアイドル・グループのなかにひょろっと入って素敵な先輩たちにたくさんイジっていただいて、こんなにたくましくなりました」と笑いを取るや、視線を先輩から同期に転じる。よっすぃー辻ちゃんが相ゆずるように互いを見合わせ、不在の空間に目くばせする。「わたしたちは4人で四期ですから。父ちゃん、母ちゃん、子供たち……」。そう言う梨華ちゃんに「ひとすじ、ふたすじ」って辻ちゃんが言葉を継ぐ。「自分の妹より可愛くみえたり心配になっちゃったり、自分のお姉ちゃんよりお姉ちゃんぽかったり」。年下のよっすぃー梨華ちゃんが「お姉ちゃん」とたとえるのは初めて聞いた。視線と言葉が織りなす四期の即興ハーモニー! *1
  • 歳月を重ねた絆の深まりがあるからこそできるワザだ。可笑しくもうるわしい。こういうのはまぁ奇跡的なことで、いまだから言えるけど実はあのころ……というアイドル集団の暴露系トークは、おおかたのところ醜悪である。これを気持ちよく聞ける条件は、歳月を経た関係の良好さ、たがいに時を重ねていまがあるという充実の現前だろう。たとえば、おニャン子クラブがついに築けなかった関係。四六時中メンバーと一緒のなか、仲の良し悪し、山あり谷ありのプロセスを経て、グループの枷が外れ、少し外から自分たちを眺めることができたところでかえって仲間との親睦が深まったんだ、てなことを裕ちゃんもどこかで語っていた。そういう娘。卒業組+αをゆるやかに束ねる受け皿として、裕ちゃんの卒業以降、ハロプロが機能していたのだと思う。
  • ハロプロに守られていた」(by圭ちゃん)エルダーメンバーの卒業がほんとに、ハロプロ=アイドル集団というくびきを取っぱらっての、可能性の場を広げる「新しいスタート」であり得るのか。ハロプロ=女の子の園という受け皿をなくし、個人の人気や実力に帰して一律に芸能界の荒野に放つことが、彼女たちを淘汰し、せっかくの家族的な絆をバラバラにしてしまいやしないか。そういう心のしこりが、古くからのファンに新たな門出の「はじまり」よりも、ハロプロとの関わりの「終わり」を語らせてしまうのでは? 淋しいことだ。真野ちゃんやエッグたちのいるハロプロとの関わりを終わらせようがないわたしは、安倍なつみの『三文オペラ』や石川梨華の『オペラ・ド・マランドロ』、そして吉澤ひとみの『フットルース』に、それぞれの新たな芸境の「はじまり」をまずは祈念しておきます。

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*1:そのほか最後の挨拶では、ASAYANのスタッフが観に来てくれていて、ガチのドキドキを与えられた当時の条件反射から楽屋ぐちで会うといまでも心臓に悪いと語った稲葉のあっちゃん、わたしはハロプロから一度消えそうになったが、わたしたちをスパルタで鍛えてくれた夏まゆみ先生と和田マネージャーに改めて感謝したいと語ったやぐっちゃんが印象に残った。