身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

熊井友理奈のBBBスポットCM讃

  • 女ヴァンパイア、キャットウーマン、狼少女――肉をかじって口元から血を滴らせた女は数知れないが、果肉をかじって口元から血を吹きだした女〔の子〕は熊井友理奈がはじめてだろう。檸檬(レモン)が本来もっている爽快と不快のアンバランスは、熊井ちゃんが抱えた幼さ(いつかの赤いランドセル)と成長のアンバランスにするどく釣りあっている。白いシャツに赤い飛沫というのは存外ありふれたイメージなのに、トマトみたいに赤く、青く、ぐちゅぐちゅとした青春期のただなかを生きる、熊井友理奈という無二の存在がそれを驚きに変換している。「青春なんて、キモチ悪い」のコピーとともに、ミディアムショット(七分身)でとらえられた制服姿の、不快をふくんだ凜冽さ! 手元からゆっくり落下する檸檬爆弾とは対照的に伸び上がるその姿態は、朔太郎が詩に詠んだ「光る地面」に生える竹、「根の先」から「かずかにけぶる繊毛」が生える青竹さながらだ。
     地上にするどく竹が生え、
     まつしぐらに竹が生え、
     凍れる節節りんりんと、
     青空のもとに竹が生え。
      (萩原朔太郎詩集「竹」より)