身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

高橋愛、帝劇ミュージカルのヒロインに!

  • 今年の秋ツアーでの卒業を宣言した高橋愛が、帝国劇場100周年の11月末→12月の演目『ダンス オブ ヴァンパイア』のヒロイン・サラ役に抜擢(知念里奈とのWキャスト)されたとのこと。身震いした。ということは、5期が10周年を迎えるほんとの直後、9月の秋口にはもう卒業ということになるのかも。てっきり11月くらいまでは娘。でいてくれるものと、たかをくくっていた。熟成と即興の個人芸でみせる一代限りの森繁=テヴィエ版『屋根の上のバイオリン弾き』から、同じ戦火の恋に身を灼く田舎娘ながら激情と放心のソニン=キム、凜と垢ぬけた笹本=キムに別様に泣かされた『ミス・サイゴン』まで、帝劇にはいろいろ想い出がある。ミュージカル『ダンス オブ ヴァンパイア』はウィーンでの評判などを聞くのみで東宝バージョンもいまだ観る機会をもてていないが、元ネタとなるロマン・ポランスキー監督の1967年作『吸血鬼』はずいぶん前に観た記憶がある。『吸血鬼』といってもこれブラックコメディの快作で、原題を訳すと「恐れ知らずのヴァンパイア退治屋ども、失礼、あんたの歯ね、あたしの首に刺さってるんよ」となる。最盛期のポランスキーが古今の吸血鬼映画を吸い尽くして消化し直した究極パロディといってよく、怖くて笑える。なおかつ色っぽい。1997年の初演版をはじめ、ドイツ版も祖国ポーランド版もポランスキー自身が演出しているらしい。よほど想いが深いんだろう。
  • 映画では凶運によって伝説化した女優・シャロン・テートが演じたヒロイン――恋仲の男をわきに置いてだったっけ、ヴァンパイア伯爵に魅せられる宿屋の娘を、女優としては憑依型の高橋愛がどんなふうに艶笑味をこめて、ざっくりいえばエロかわいく演じることができるか。そのあたりがまずは見どころだろう。役柄としては、当時24歳のシャロン・テートがそうだったように、ベテランより活きのいい新進女優が似合う役だ。ざっくりした普段とは一転、ステージになると艶めく同い年の高橋愛にぴったり。さらに、伯爵とのデュエットは……ううう、楽しみ! 役のエモーションを台詞から歌へ、歌からダンスへとナチュラルに繋いでゆくシンギング・アクトレスの素養という点では、高橋愛はまだまだ経験不足とはいえ、ぽっと出じゃないですからね。高橋愛主演で宝塚とコラボした『リボンの騎士』や『シンデレラ』に魅せられた者としてひいき目こみなのを承知でいえば、演技・歌・ダンスの三拍子にかくもバランスのとれた潜在力をもつエンターティナー、未来のミュージカル・スターは、日本じゃきわめて希少・貴重だと思う。あとは、みずからのプレッシャーや、実力の伴わないアイドル風情がってなバッシングにいかに打ち克つか。まぁそれは、本田美奈子にしろ知念里奈にしろソニンにしろ、みんな通ってきた道なんだから舞台で結果を残すしかない。愛ちゃんならきっとやってくれる。

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