身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

スマイレージ新メンバー発表 ハロコン夏

  • 8月13日、土曜のハロコンでは、スマイレージの曲のたびに雛壇の宮本はノリノリだった。隣のくどぅーこと工藤遙と、腕と肩を揺すりながら笑顔をくちゃくちゃにして1回2回と見つめ合う「有頂天LOVE」のフリなんて、観ているこちらが破顔しちゃうほど。きっと朗報が届いたのね、と思っていた……。おそらく佳林ちゃんには、そう遠くないうちに新たな道が示されるだろう。新ユニットの扉が開くのか、マザーシップへの桟橋が架けられるのかは知らないが。「切り札の温存」なのだから悲観するには当たらない。ただ、かたちの上ではエッグでひとりだけ*1 落ちたことになるので、その精神的なケアだけはお願いしたいです。わたしはファイナル前日の中野しか行けなかったが、堪能した。いまのハロコンにはモベキマスが繰りだす歌とダンスの楽しさが、コンパクトだけどぎゅっと詰まってる。「ファンコラ」のコーナーでは、高橋愛率いる新生モーニング娘。の「笑顔YESヌード」に鳥肌が立ち、岡井千聖ソロのセクシー・ダンス付き「SOME BOYS! TOUCH」に顔がにやけ、肝っ玉母さんみたいな須藤茉麻率いる新生エッグの「がんばらなくてもええねんで!!」のチャップリン・ダンスに笑いがこみ上げてきた。それにしても、どの項目の順位にも顔を出すスマイレージの「スキちゃん」、愛されてるね。

勝田里奈/かつたりな 竹内朱莉/たけうちあかり

  • 土曜ハロコンの雛壇で隣りどうしのふたりは対照的だった。竹内朱莉がいたって涼しげな表情なのに対し、勝田里奈は終始不安げ、というか淋しげにすら見えた。胸が騒いだ分なおさら、エッグからこのふたりの合格はうれしい。テレ東の『ハロプロTIME』を観ても、勝田里奈は実力コンビ朱莉・佳林を半歩後ろから追っかける目立たぬ位置のルーキーとして目立っていた。というか、上手くフィーチャーしてもらっていた。得したね。いや、光が当たったとたんみんなが瞠目したんだから、歌とダンスに地道に精進してきたたまものだ。ここいちばんのチャンスめがけて泥くさく這い上がる姿が、りなぷーこと勝田里奈ちゃんには似合う。自称「ボーイッシュ担当」の竹内朱莉は、同期の仲良し譜久村聖とは図らずも別々の道を歩むことになったけど、歌もダンスもスマイレージの支柱になれる器だろう。「サブメンバー」というポジションは、オリメンの4人自体結成時は仮メンバー扱いだったし、ほどなくはじまるツアーに合流という時間的な制約からも仕方ないと思う。けれど、りなぷーとタケちゃんにかぎれば、正式メンバーとして短期間でどこまで仕上げてくるか、観てみたかったなぁ。

小数賀芙由香/こすがふゆか

  • 今回の「スマイレージメンバー募集」への興味は、二次面接と合宿後の三次面接の模様をニコニコ動画で観ることができたのが圧倒的に大きかった。かつての『ASAYAN』にもドキドキしたが、あれは番組スタッフとアップフロントが蜜月関係を結んで成功と挫折の物語を次々に仕掛け、合否のラインでそこにハマってあっぷあっぷする者たちをドキュメントし加工する、という多分にフィクショナルな面白さだった。編集の抑揚やナレーションの誘導を駆使しての。ナレーションはなし、編集は簡単なスイッチングのみ――面接のだんどりの悪さ、「間」のもたなさまでが見えてしまうニコニコ動画のフラットで拡散的な映像はその対極で、一見退屈だが意味や物語に収まる前の未加工・未分化なディテールの宝庫でもあり、ハマれば何度もリピートしたくなる。二次面接時はまったく引っかからず、三次面接をリピートするにつれ、気になる存在、心を寄せたくなる存在へと浮上してきたのが小数賀芙由香だった。練習の成果が出せなかったと悔いて落ちこむ子たちの間で、練習のときは間違えてばかり、失敗もしたけど前よりできてうれしかった、と彼女はにっこりしてつーっと涙を流した。少しでも媚びがあれば甘い現状肯定で終わるところだが、滑舌もリズムも全否定という針のむしろを通ってここまで来たという「変化」の手応え、新しい自分への驚き、生きつつある現在の肯定感が泣きべその表情を内から照らしていた。自信のなさに曇っていた乱れ雲がみるみる光をふくむような、「心映え」を感じるいい笑みだった。断固、応援したい。

■中西香奈/なかにしかな

  • 大阪・宗右衛門町あたりの小料理屋の看板娘っぽい。「おおきに」の挨拶と割烹着が似合いそう。クラスにひとり、大阪の中学校にはこういうしゃがれ声の婀娜っぽい娘がいる。はんなりした色気がある。意外に苦労性かも。そういうところがつんくPの琴線に触れたのだろう。仲間の窮地に腕まくりして立ち向かいそうな鉄火肌にもみえるのに、ダンスの練習中にも歌の練習中にも、困り果てたような身の置きどころがないようなふわふわ感があった。うち、まだ素人やもん、下手っぴなん、当たり前や。いややわぁ、このイケズ! とでも言いたげな。自己評価は、よくしゃべる。温もりのある大阪弁の、ええ女になってちょうだい。

田村芽実/たむらめいみ

  • 子役は大成しない、といわれる。子供のうちに大人に好かれる演技を覚えて、OKの出る演技ってこんなところ、と早くからタカをくくってしまう。芝居も役柄も狭い範囲で固まっちまう。12,13歳の思春期でまずつまずき、20歳前後の大人の入り口で大方消えてゆく。ただし、例外もいる。まわりの大人にスポイルされず、生きることと分かちがたいものとして、自身の成長を感受し参照しながら演技を柔らかく高めてゆけるひと。自身の地平を拓きながら芸域をおずおおずと拡げてゆけるひと。その内発性の大切さに、実のところ子供と大人の区別はない。田村芽実はミュージカルで鍛えた子役らしく、演じるように歌う。そんな「臭い」を嫌みに感じるひともいるだろう。が、二次審査の自由曲に断然不人気な「がんばらなくてもええねんで!!」を選び、ひとつひとつの歌詞に(スマイルスマイルの繰り返しにも)表情や抑揚をつけて、スマイレージとは異なるワンコーラスの世界像を自己消化してつくり上げてみせたのは、やっぱりたいしたもんだと思う。リズムの基本をすっ飛ばしたその「表現」への先走りが、おそらく歌の先生の逆鱗に触れたりもするのだろうが。実は、彼女の素の部分はおどおどそわそわここに居ることの不安にさいなまれていて、見せ方の芸でそれを受け流しているようなところがあるんじゃないか。見せ方が上手いといっても余裕のある完璧さじゃなく、アンバランスな自分をそうすることで持ちこたえてるふうでもあって。つんくPの言葉にはっと驚くときも、ほとんど無意識だろうけど、ミュージカル演技みたいに口にてのひらを当てて愛嬌ある驚きを表してみたり。なんだか笑えてくる。裏を返せば、隙だらけなのだ。膝を抱えて寄る辺なく中空の一点を見据える田村芽実が、わたしは愛しい。その内発性に賭けてみたい。

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*1:三次審査まで残ったなかでは、ですね。