身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

ハロプロ研修生 12月の生タマゴShow!

  • 9日、日曜日の昼の回。かなり無理をして渋谷まで出かけた。今回もメモ程度に。O-EASTは左右が広いので、後ろからでもステージに近くてかなり見やすかった。でも、個人的にはファミリー席を用意してほしいです。今回も超絶楽しかったけれど。研修生の発表会は、これがグループのベストのかたちってポジションを固定せず、新しい芽吹きの勢いを荒削りのままどんどんセンター付近に登用してゆく。研修生個々の資質や実力を「試す」、ステージ体験の場なのだと思う。あぁ「試されてるな」っていちばん感じるのは、はまちゃんこと浜浦彩乃だ。名曲「行くZYX! FLY HIGH」のフェイクみたいに、へなへなになっちゃうこともままあるんですが。大塚愛菜の歌のパートナーといえば小田さくらという印象が強い。今回は、気づけばそこにはまちゃんが居た。自分を可愛く見せることには達人クラスの道重さゆみから譜久村聖が技をぬすんで食らいつく、という構図のデュエット曲「好きだな君が」が、自分を可愛く見せることが苦手なのにみょーな婀娜っぽさのある大塚愛菜浜浦彩乃の天性に張り合う、という関係性に変換されていて膝を打った。
  • それぞれの苦手な領域を試されている大塚愛菜浜浦彩乃は、それだけ推されているってこと。大塚ちゃんはそのあたりわかっていて、「許してにゃん」の難行も自分からすすんで飛び越えちゃう。こちらがことさら意識しなくとも、声が厚みをもって聞こえてくるのは金子りえ室田瑞希の娘。秋コン帯同コンビで、伸びしろの大きさりという点ではむろたんが今公演随一かも。りっちゃんは地平本願だったか、こぶしの効いた節回しが快感だった。植村あかりは歌より台詞とダンスに進境があった。シャッフル曲「もしも…」。モデル並みにたっぱがあるからビニール素材の赤いミニの衣装が映える、映える。しかも、不慣れを隠すための舞台上の所在なさからくる「クール」の印象が薄れ、ステージを楽しむ余裕が出てきた分、涼しげな笑みに年相応の幼さが貌をのぞかせる。そのあたりのアンバランスがなんとも色っぽい。センターにいなくても自然と目があーりーのほうへいってしまう。
  • 結局、研修生発表会の魅力のカナメは、中心から遠心的に視線が逍遥する「目移り」の楽しさなのだと思う。ベテランの高値安定のなかでパフォーマンスの鮮度が消えない旧エッグ組の高木紗友希田辺奈菜美がいれば、初々しさのなかに深窓の令嬢風の渋みを宿したニューフェイス組の山岸理子もいる。だが、今回もっともわたしの心を騒がせたのは一周めぐって宮本佳林だった。「行くZYX! FLY HIGH」のダイナミックでキレのあるかりんちゃんも素晴らしかったが、今回は誰がなんと言っても「Only You」。最初のフレーズが苦しげだった。高音を出すのが辛そうだった。声を出した後に「私、だめね」って辛さが尾を引く感じだった。喉を傷めていたのか、子供と大人の境目で出せる音域が変わったのか。なんだか「目移り」できなくて凝視してしまった。
  • グッと溜めてサッと放つダンスの緩急が、一途さのなかで振動する歌の感情とリンクしはじめる。苦しげな歌が初恋の苦悶や痛切とつながり、音楽と動きが熱を帯びて無媒介に溶け、新たな愛の地平が眼前にひらけることの悦びへとゆるやかに昇りつめてゆく。歌う=踊る=愛するという3連譜みたいな感情の、ひといきに持ち直し、持ち上がる回復力こそ、この楽曲のキモではないか。おごそかにして軽やかな音楽の精髄が、かりんちゃんの肉体に乗りうつり、巧拙を超えた生動をはじめる。なんでも器用にこなした宮本佳林が、いままさに壁にぶち当たりながら、それを梃にして光明と歓喜を身にまとい、初めてのステージ上の恍惚を受けとめようとしてるみたい。この不定形なスリルは、あっという間に立ち去ってしまう焔の煌めきは、断じて現場じゃないと味わえない。
  • 今回の発表会は、モーニング娘。11期『スッピン歌姫』オーディションのファイナリスト、牧野真莉愛岸本ゆめのら新メンバー6人のお披露目公演としても長く記憶に残るだろう。小田さくらの合格発表の後も、CS番組や雑誌記事で顔隠しなしの露出があったから、きっと何か動きがあると確信していた。研修生加入のお知らせは、待ち焦がれたうれしさだった。公演では異例のダンス披露まであって、ふたりはツートップだった。合宿審査の課題曲「 What's Up? 愛はどうなのよ」でのパフォーマンスという有利さもあるのだが、トークインパクトを含めてこのふたりが頭抜けていた。「なかなかクレバーな感じがして、いまのモーニング娘。に入ったら最初からガンガン前に出てくるやろな」という最終審査時のつんくPの言葉から、勇気をもらったその「気持ちを胸にいまここにいます」、そして「まずは研修生でいちばんの人気者に」と、牧野真莉愛は力強く宣言した。
  • 「決まれば即戦力」と、つんくPはあの時、言葉をつづけたのだった。歌姫オーディションでは、ほしい即戦力の方向性が違っていたのだろう。そのスター性は、札幌ドームでお花を手渡したことが「大切な思い出」と日ハムファンの彼女がいう新庄剛志にも相通じる。岸本ゆめのは、風呂場のドアの噛み合わせが悪く、引っ張ったら「ドアと壁が(いっしょになって)私に襲いかかってきました」と笑わせた。2年前のことで、お風呂に浸かるとドア代わりのカーテンから風が入ってくるのにももう慣れたって。合宿中はみんなとつるまず、協調性はあるものの一匹狼タイプだったという。新垣里沙を、歌を聴いてると泣けてくるほど尊敬しているとも(「TOP YELL11月号)。ぬかるみをこつこつ単独で這い上ってくるタイプの岸本ゆめのと、生来の快活さで周りを照らしスポットライトを約束されたタイプの牧野真莉愛。ふたりの好対照な競い合い・高め合いは、もうひとつの好対照、鞘師里保小田さくらの競い合い・高め合いとともに、いまからわくわく愉しみでならない。

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