身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

大臣の息子/久住小春

カレーライスせんえん。

大臣の溺愛を一歩引いたところで受け止め、その過剰な愛をかすめとってはヤバくなれば身をかわす。馬鹿息子というより、自分に火の粉がかからぬよう、ここにいるかと思えばあっち、あっちにいるかと思えばここ、と勝手気ままに振る舞って大人の価値観の網にかからない。そんな大臣の息子=久住小春が、宮殿でコミカルに歌い踊るナンバー「記憶力」、またの名を「カレーライスの唄」とでも呼びたいが、これは楽しかった。


役が生きる舞台の虚構空間と役者が生きる舞台外の現実空間。ふたつの異質の空間を、“森のキャプテン”という異界からやって来た小春ちゃんなら、観客の目の前で息子役を演じつつ自在に行き来することなど確かにわけないよね。自動人形みたいなヘンテコな動きを駆使しちゃって。そうニヤッとせずにはいられない舞台ならではの遊び心の妙味があった。


やがて、息子は父である大臣の手で傀儡(かいらい)の王に祭り上げられる。妃の候補はすべて気に入らない。おまけに、大臣の強いた圧政でシルバーランド国は急激に弱体化してゆく。状況はきわめて悲劇的だ。でも、このお子ちゃまはへらへら笑い、デタラメにふるまいながら、情勢をちゃんと見極めている。そして愚かな父を見捨てず、支えてあげるのだ。無力だけれど、強い子。
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