身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

リボンの騎士

外堀を埋めるシリーズ 大団円

ミュージカルの“新大陸”へ。 名古屋を残すのみとなった『娘。ツアー 2006秋 踊れ!モーニングカレー』(わたしが観たのは武道館と千葉)は、メンバーがMCでさかんに使ったカレーの比喩でいくと、ぐつぐつ煮えたカレーの飛沫が飛んできて熱っ! 熱っ! って…

外堀を埋めるシリーズ 7c

超HAPPYな惜別の振付。〈断片的エピローグその3〉 『娘。LOVE IS ALIVE! 2002春』in SSA は、夏の嵐をまだ知らぬ娘たちが波打ち際の切っ先に立っているようなライブだったと思う。炎と拳が天を突く「そうだ!We're Alive」にはじまり、男役×女役のコール&…

外堀を埋めるシリーズ 7b

オーディションというドラマ。〈断片的エピローグその2〉 いくらでも取り替えできるその他大勢のちょい役とも思われがちなコーラス・ダンサーを、主役として前景に押し出してスポットを当てる。『コーラスライン』はそんな画期的ミュージカルだった。ひとり…

外堀を埋めるシリーズ 7a

月夜のコーラス隊。〈断片的エピローグその1〉 このふらつき気味の“外堀シリーズ”は「ザ☆ピース」から『リボンの騎士』を横目にみつつミュージカル・コメディ周辺を迂回して、再び初っぱなの「Mr.Moonlight」に戻ってこようとしている。しかし、まとめには…

外堀を埋めるシリーズ 6c

ミュージカルが“子供”だったころ。〈急〉 フランスのヌーヴェルヴァーグの連中がハリウッドのウェスタンやスクリューボール・コメディ、サスペンスやB級アクションといったジャンルから“映画作家”を発見し、そのすぐれた作家性を愛してやまなかったことはよ…

外堀を埋めるシリーズ 6b

ミュージカルが“子供”だったころ。〈破〉 ブロードウェイのミュージカル史を覗いてみると、第2次大戦の戦時体制下に開演した『オクラホマ!』*1という画期的作品をもって、ミュージカルは“ミュージカル・コメディ”から“ミュージカル・プレイ”に進化したとい…

外堀を埋めるシリーズ 6a

ミュージカルが“子供”だったころ。〈序〉 「でもぼくは馬鹿じゃない。記憶力だってものすごくいいんだ」。そう久住小春扮する大臣の息子は胸を張る。おもむろに歌いだす。大臣の息子が自慢するその「記憶力」ってなんだろう? 幼いころ、本棚に毎月増えてゆ…

外堀を埋めるシリーズ 5

娘。“ミュージカル・ナンバー”の不朽の破壊力。 2〜3ヶ月に一度くらいのペースでリリースしてきた娘。シングルだが、2001年7月の「ザ☆ピース!」は前作の恋レボから7ヶ月以上経過している。まさに満を持しての登場。それだけに、待ち焦がれるファンのみ…

外堀を埋めるシリーズ 4

娘。から湧きでる“ミュージカル”に包まれて。 21世紀最初の春、中澤裕子卒業はいろんな娘。特番の果実を落としてくれた。その充実ぶりは他のメンバーの卒業・脱退を見まわしても空前絶後のものだった。フジの『中澤企画またの名を辻SP』、テレ朝の『春満開!…

外堀を埋めるシリーズ 3

すたれた遊園地のつむじ風。 いきなりミュージカルの聖地・日生劇場での公演となった『LOVEセンチュリー』は、いろんな事情を抱えた娘たちが「約束の場所」でもう一度自分たちの気持ちを確かめ合い、さまざまな現実と衝突しながら夢を追う、という『I WISH』…

外堀を埋めるシリーズ 2

ミュージカルが娘。とともに始動するとき。 吉澤ひとみを「男性キャラ」としてセンターに大抜擢した「Mr.Moonlight」は、ネオスウィングを下敷きに宝塚風きらびやかさを思い切りねらった楽曲だったし、夏まゆみもあれは「宝塚のダンス舞台を意識して振り付け…

外堀を埋めるシリーズ 1

娘。と宝塚のファースト・コンタクト 3年半前、モーニング娘。と宝塚は最初の遭遇を果たす。しかし、TVのエンターテインメントのトップと大舞台のエンターテインメントのトップの競演という鳴り物入りの目玉企画であったにもかかわらず、だれもがそれを忘…

雑記 2

わたしにとってハロプロ系のラジオといえば、むかし『Oh-so-ro』、いま『ちゃんチャミ』。そのちゃんチャミがあと1回で終了するという。「毎日が初日のように新鮮な気持ち」「もう楽しくて仕方がない」と梨華ちゃんがリアルタイムでうわずり加減に語り続け…

雑記

いつになく高橋愛熱が高まってる。でもヤンタンのレギュラーに戻っても、私の本来の居場所じゃない、と思いはじめてはいないかと胸騒ぎがしてしまう。第2の本田美奈子として『レ・ミゼラブル』のヒロインに、とはよく言われることだが、高橋には踊れる強み…

スポニチ評の彼方に

こうなるまでは……言えないことばかり。 たぶんスルーすることが大人の態度だとはわかっています。でも、某検索サイトのトップにみつけたスポニチ評の誰それに「噛みついてみる」という一文を真夜中にたまたま読んでしまい、噛みつくはずが、アイドルにしては…

トライアングルとシンメトリー Ⅱ

「愛する愛」に殉じたサファイアは、ヘケートに魂(命)を返してもらう。悪魔(魔女)に魂を売っても悔いなどなかった大臣は、サファイアに旅立つための命を返してもらう。*1 地上の愛の要諦に気づいた魔女ヘケートは、すべてを見ていた神様から「人間の魂」…

家臣ナイロン/小川麻琴

私は良い人すぎる。秘密を守るのに慣れてない。 大臣の息子と戯れ、はしゃぐ姿や、中世という時代背景から家臣ナイロンは“子供”だとする考察が《こちらのサイト》にあって、それはとても説得力がある。息子よりちょっと年上の子供。もちろん、血が繋がってる…

トライアングルとシンメトリー Ⅰ

右の図は『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』のキャラクター関係図の概略的試みです。ほんとは愛憎や行為の方向性を“→”で示してゆくのがいいのでしょうが、わたしは、あいにく幼稚園レベルのパソコン作図技術しか持ち合わせていません。それとは別に“→”マーク…

千秋楽・昼公演 雑感

楽におなり 羽のように軽く 砂のように白く。 『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』劇中クライマックス前、大臣を急襲するサファイアに小春ちゃんの息子が止めにはいるところで、女装衣装がはぎ取れず、白い帷子一枚の芝居にスムーズに移れないハプニングがあ…

断章

わかると思ったことが またまたわからなくなる。 22日夜の2幕開演直前。緞帳が開く前に少し“間”があって舞台袖のあたりから「のの(ちゃん)頑張ろう!」の声が聞こえる。あれはだれの声だったか? 若やいだ女性の声だったから待機中のだれかだろうか。幕開…

再々見雑感 ピエール/辻希美

いつか見た 愛らしい ほほえみをたたえ。 22日。やっかいな仕事になんとかケリをつけて時計を見たら、もう6時近かった。松浦亜弥のフランツに続いて、結局、辻希美も観逃してしまうのか。しょうがない。遅れに遅れた仕事だもの。でも、辻ちゃんのピエールだ…

魔女,大臣,サファイア 三位一体考

とうとう見つかったよ いまこの瞬間(とき)というもの。 決闘決したフランツ王子の剣先にサファイアの心臓が最後のひと打ちする瞬間、魔女ヘケートはその剣先から海のようにわき立つ血潮に「愛する愛」の“啓示”を受ける。そのとき、ヘケートならどんな詩を…

魔女ヘケート=演出家 考

言っておしまい、心の重荷を……! (前項の続きとなる考察、あるいは戯れ言) サファイア 愛と掟(おきて)。サファイアは一方で掟に生きる者であり、もう一方で愛に生きる者です。強さとやさしさ、仮面と素顔にこれを対応させてもいいでしょう。そして、さば…

大臣/吉澤ひとみ 寄り道的再考

私には、あなたこそがヘビに見える。 自分のしっぽを自分で食らうヘビに。 『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』の主要人物は、役を内側から突き動かすイデア(根本観念)のようなものをもっていて、それが彼らを劇的な行為へと駆り立てるように思われます。ひ…

ピエール/三好絵梨香,石川梨華    その2

よみがえれ よみがえれ よきひと よきひと。 ピエールがまず歌い出し(この最初のフレーズを歌う三好絵梨香の声は柔和で温かくて素敵だった)、人々のコーラスとなるクライマックス飛び切りのナンバー「葬送」が深々とわたしたちの胸底に響いてくる。サファ…

ピエール/三好絵梨香,石川梨華    その1

おい。おれたち、このままでいいのか。 牢番ピエールは小さな役だが、思いのほか重要な役だ。難役でもあると思う。第2幕冒頭、ドクロを柱にあしらった暗い監獄。ピエールひとり板つき*1 で登場し、サファイアと王妃を夜明けまでに殺害せよ、という大臣の命…

再見雑感

10日夜、初日以来となる『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』を観てきましたが、いや、藤本美貴の魔女ヘケートには改めて惚れますね(以下、終始ネタバレ)。天から地上を睥睨(へいげい)するって感じとともに、魂を差し出してもいいというせっぱ詰まった人間…

レビュー/フィナーレのこと

魂たちよ、こんどはなにになりたい? フィナーレのことに触れておきたいと思います。このフィナーレは『リボンの騎士 ザ・ミュージカル』の劇本編とは違う位相にあるものです。台本にはこう書かれています。「ハロー・プロジェクトのフィナーレ。……アイディ…

サファイア/高橋愛

男か。女か。たいした違いはない。 どちらも生まれて育って、死ぬときは死ぬのだ。 自分が恋いこがれる人と自分が心底憎んでいる人が同一人物だと、フランツ王子はサファイアが剣に倒れるまぎわまで知らない。一方、サファイアは自分が想い想われている人が…

大臣/吉澤ひとみ

いや。芝居こそ現実なのだ。 手塚漫画との対応関係で、もっともキャラクターに開きがあるのはこの大臣だろう。ジュラルミン大公がイバリ屋のむくつけき男だったのに対し、吉澤ひとみ演じる大臣はどこかドジで憎めない。サファイアが大臣への憎しみをあらわに…