身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

雑記 2

  • その間、石川梨華が何を語ったのか、ほとんど思い出せない。とりたてて劇づくりの秘伝やミュージカルの奥義が語られたわけではない。ただ、謎めいた演出家と出会った驚きを彼女は伝えようとしてくれた。突然現れて2,3度会っただけで私のすべてをわかったふうにいう、このひとはいったい何者? こんなひと、いままで会ったことがない。戸惑いと反発心。信じてみようという想い。その中間地帯で「自分の気持ちを抑えずに正面から立ち向かって」リハーサルを重ねた。いま舞台の幕が開いたら毎日がもう楽しくて楽しくて。木村さんを信頼してぶつかってきてほんとによかった……。
  • 石川梨華はお話好きと自称するわりに、あまりおしゃべりが上手くならない。けれど、かぎられた語彙で詰まり詰まり、言い得ないことを逡巡しつつなんとか言おうとするその訥弁が、話し上手の能弁よりはるかに心を打つことを改めて知った。まるでセレニアス・モンクのピアノを聴いているみたいに。すぐれた演出は、その現場に立ち会い得た人々への嫉妬心をあおり立てるものだが、聴いていてわたしもその場に居合わせたかったとつい嫉妬してしまうほどだった。
  • それにしても、石川梨華の舞台稽古への取り組み方は、道筋の見えぬ恋路に戸惑い、濡れ衣に自尊心を傷つけられながら、つんのめるように目の前のことにぶつかってゆく石川フランツ王子の特徴そのままではないか! 演出家の木村信司がいかに演じ手自身のキャラクターや持ち味を見きわめて、それを役に肉付けし、役に血を通わせているか。そんなことも、ちゃんチャミのラジオを通じて得心できたのだ。

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