身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

娘。コン吉澤ファイナル in SSA

最後まで一緒に楽しまない? 笑って歌って終わろうぜぇ!

  • 夜のみ。昼の情報はシャットアウト。最初のMCの決めポーズ談義で吉澤ひとみが「ミスムン」を口ずさんだので、セレモニー向けの曲によっすぃーは「I WISH」のほうを選んだのね、と確信する。セレモニーのみならず、笑顔で最高のコンサートをという吉澤ひとみの初志がすみずみに宿っていた。ひとりひとりの祝辞の後、「笑って歌って終わろうぜぇ」という吉澤のうながしを受け、「ここいる」「青空」でダブル・アンコールをしめる構成をふくめてそう思った。彼女自身の比喩を借りれば、吉澤船長の豪放な舵取りにスタッフもメンバーも波間で身をゆだねているような。
  • 晴朗。清冽。だれもが「天晴れな卒業コンだねぇ」「よっすぃーらしいねぇ」って嘆息してしまうような、白い航跡を描いてライヴは進行する。吉澤ひとみのアクション・ペインティングの、ダイナミックなうねりの描線を連想してもいい。SSAという巨大な画布をなおハミだすほどの筆勢。しぶくような野趣に富んだ「動」をこれほど感じさせてくれる卒業コンサートは、かつてなかったと断言したい。何度も泣かされたが、それ以上におおらかな笑いを笑った。
  • オーラスのドスンをするために、吉澤ひとみは両手をいっぱいに広げ、突きだした額で会場の熱気を切り裂くように花道を駆けた。まるで水面を滑走するオオハクチョウみたいに、ソロとして飛び立っていくんだなと思った。モーニング娘。の活動とソロ活動の間に句点は打っても、いまは休息なんてしてらんないぜ! とその「滑走」は無言で語っていた。だからお願い、「7年間自分自身と闘いつづけ、走り続けてきたから」こそ全身で浴びていられるこの「幸せ」の時間を、いましばし私にください――。
  • 「時間が止まればいい」という吉澤の言葉をそんなふうに受けとめ直したとたん、切なくなってまた泣いた。なんだか吉澤のけなげさに触れた気がして。みごとに颯爽をつらぬくオオハクチョウが水面の下で水を蹴る「けなげさ」。ああ、こんな陳腐なたとえじゃ、新たな地平へと身をひるがえす吉澤ひとみの「すばやさ」にまるで追いつけやしない。なごり惜しげな感じで手すりに肘をかけ、歓声のほうへと上目遣いに振りむく舞台袖ラスト・ポーズがちょっと往年のジェームス・ディーンみたいで、最後まで「男前」のよっすぃーだったよ。

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