身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

 ハロプロ新人公演6月 昼(赤坂)

  • ドゥアップのUPラッシュにまんまとしてやられた。超早起きしてやり残した作業を終え、雨を押して仕事場を後にする。赤坂BLITZの当日券発売の仕切りの悪さをめぐって雨中のごたごたがあり、新人公演じゃかつてない超満員のフロアは殺気立ってる一角もあったが、「恋するエンジェルハート」にはじまり、前回の『マンマ・ミーア』ばりのシアターダンスに代わって『エンジェルハーツ』(五期がフィーチャーされたテレ東のアレですよ!)ばりのチアーダンス(曲はちょこラブ)をラス前の新趣向とするライブは、下界のぬかるみをよそに、雲のなかにいるようなピースフルな昂ぶりがあって楽しかった。私たちが日々成長するってことは昨日のウチらと今日のウチらが変わってるってことだから、今の私たちを観てもらえるのは今しかないよぉ、ってな名惹句を吐いたのは福田花音ちゃんだったか、あるいは℃-ute矢島舞美ちゃんだったか。そういう途上にある者の上昇力を感じさせてくれるのが、新人公演の(頼もしい先行者である℃-uteのライブもそうだが)、一度赤い靴を履いたらくたばるまで踊り続けずにはいられなくなる魔力だ。
  • 前回の横浜3月公演では、MilkyWayに向けて猛特訓が始動していたのだろう、受験による活動休止後の吉川友ちゃんの急成長に目を見張らされ、とくに花音ちゃんとの「デコボコセブンティーン」の、体積比9:1の無差別級デュエットは新人公演史上でも屈指のものだった。今回はトップアイドル・きらりちゃんを外しての持ち歌「アナタボシ」が、こべにとのえるの見せ場になっていて、シャープな痩身型の北原沙弥香=のえるに対するふくよかな肉感型の吉川友=こべにのとりあわせは、アニメより生身のライブにこそふさわしいものだった。吉川友ちゃんをみていると、下町の商店街に必ずいた豆腐屋さんの色白・絹肌の美人娘をさす「豆腐屋小町」って言葉を思い出してしまう。絹こし一丁くださーい、ってハナタレ少年が呼びかけたら、店の奥からはーいと出てきて、白い手を真水に入れてお豆腐をすくい取ってくれる。お豆腐と二の腕のひと連なりが真水に屈折し、乳白色になまめいて揺らめく。で、芥子をちょっと添えてまだ濡れた手で手渡しして、彼女はありがとって笑顔で見送ってくれるの。少年はそのどぎまぎを味わいたくて、明日も喜んでお使いに行くだろう。
  • きっかとさぁやの仲良しコンビは第一線で切磋琢磨して歌とダンスの総合力では、エッグのなかで一頭ぬけてきた感がある。さぁやを「親友」で「最高のライバル」と公言し、きっかとも舞台裏映像で肩を並べる光景が多かったりする森咲樹ちゃんは置いてきぼり感にへこんでいないか、わたしはふっと気がかりにることがある。モリサキは常に前向きだからそういうこと、おくびにも出さないが。今回はマイクの不調に泣いた亀有デリステのリベンジで、振りの大きなダンスや表情はもちろん、歌もいつにも増して気合いが入っていた。とりわけ、仙石みなみとの「CRAZY ABOUT YOU」のソング&ダンスはハスキー気味のみなみちゃんとの声の相性も良く、クールななかにファニーな味わいがあって魅せてくれた。
  • 前向きで弱音を吐かない分、余計なお世話の親心で心配しちゃうのは親友の小川紗季にもライバルの前田憂佳にも前回・今回とソロで先を越された花音ちゃんも同じ。公演後の「粒やき」に、「新人公演でいつかソロを唄わせてもらえるように頑張ります(゜▽゜) 」なんて上がってると、やっぱり意識してるのね、って胸がキュッと痛くなる。でも福田花音の力量と意識の高さには、かにょんには負けられない! って周囲のパフォーマンスを底上げするパワーがあるからね。「安心感」で花音とデュエットした関根梓ちゃんなんていままでほとんど目立たなかったのに、歌もダンスも相当がんばった跡がみえたもの。花音ちゃんの小さな夢が、9月のメルパルク・ホールではかないますように!
  • 会えない長い日曜日」という難物をソロで歌った憂佳ちゃんは、笑顔がこわばったステージ上の緊張が直接心臓に伝わってきて参った。崩壊寸前のところをよく持ちこたえたと思う。前田憂佳の声、わたしは好きだ。子どもの頃、留守番をして小腹が空いたので背伸びして戸棚を手でまさぐると、たぐり寄せたのは蜂蜜の瓶で、そこに指を突っ込んで嘗めたときのむせるような甘さ。そんなはるかな甘さの記憶とゆうかりんの声は結びつく。小川紗季ちゃんのソロ「FIRST KISS」には驚いた。今回の白眉のひとつ。初恋を知った少女のおののきの張りつめた抒情が鈴木愛理の「FIRST KISS」の特質なら、小川紗季のそれはおののきつつも華やいでしまう陰陽の表情の豊かさだろう。3人の新人が紹介された後の登場だったから、そのパフォーマンスに貫禄すら感じた。フェイクの最後の高音以外は、練習の成果をそのまま本番にハジけさせたって感じじゃないだろうか。次の「好きな先輩」のアタマを引き継いで、サキチィ独特の愛くるしい笑みを一気に解禁してみせたところなんてもう唸るほかなかった。

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