身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

キューティー・ランド2 12/21昼(新宿)

オトムギと℃-uteからの贈り物『真冬の寝る子は℃-ute

  • 前夜まで年末進行の仕事のヤマ越えに必死だったから、情報を一切もたないまま新宿御苑をめざした。中島早貴が下手に登場し、いきなり「ポエム調」のナレーションをはじめた。びっくりした。ああ『寝る子は℃-ute』だ、夕焼けが似合う語り部・司(つかさ)だ! ってすぐにわかった。あったかいご飯に冷たいカレーをかける「次の日カレー」を、あれから何度も食べたんだ。お芝居の後で『真冬の寝る子は℃-ute』と、今回のタイトルを教えてくれたのもなっきーだったっけ? それを忘れるほどボーゼンとしてしまった。矢島舞美の来夏(らいか)と萩原舞の麻由(まゆ)の元にみんなが集い、気心の知れた子供たちだけのクリスマス会を開く、という設定。あの夏休み以来、みんながそろうのはひさしぶりだ。その子供だけの時間に、またまた管理人の良平とダメ叔父さんのバカ浩が闖入する。大人の世界の「ちりあくた」を持ちこんで。
  • お姉ちゃん、どうして怒らないの? と麻由がけしかける。火事の事件以来、来夏はすっかり人間がまるくなり、代わって妹が反抗期を一手に引き受けている。ここの萩原舞の演技は、虚とも実ともつかぬリアルさで、新宿厚生年金ホールにドカンドカンと笑いが爆発した。ノリマツとイシゾー(鈴木愛理有原栞菜)のアイドル修業中コンビに向け、酔って悪態をつくバカ浩に、ついに来夏のカンニン袋の緒が切れる。お姉ちゃん、いいぞ、もっと怒れ! と、つかさず麻由が棍棒替わりのペットボトルを差しだす。がんばってるノリマツやイシゾーを、あんたみたいな中途半端な大人が「言葉で汚すな!」、という来夏=矢島舞美の言葉にシビれた。胸を突かれた。笑いながら泣いてしまった。
  • 劇の後のサンタ衣装による「きよしこの夜」アカペラ合唱もディディディディスコの盛り上がりもやたら楽しく、いつもは遠慮する高速握手会にまで参加してしまう。来夏に再会できてうれしかったとか、麻由サイコーとか、これからもがんばってじゃなく「たのばって」(「楽しい」と「がんばる」を組み合わせた劇中の造語)とか、ひとりひとりに伝えたくって。帰りの通路に寝るキュー、真冬の寝るキュー作・演出の塩田泰造さんがいた。良平の池田稔さん、バカ浩の中神一保さんらといっしょに春の大人の麦茶公演のチケットを売っていた。人口密度が高めだったから小さく会釈して素通りしてしまったけど、ほんとはお礼を言いたかった。
  • 予算も時間もなかったでしょうに、℃-uteを盛り立ててくださって、ありがとうございます。お手軽な寸劇ではなく、ちゃんと一場の舞台に練り上げられていました。主題歌は「真冬」バージョンだし、台詞も一切手ぬきなし。仕事を超えた愛を感じました。稽古場の愉しさまでが伝わってきました。今日は、夕焼け空がいつもと違ってみえそうです――。家に帰る途中に、寄り道して隅田川のほとりに降りてみた。東京のちりあくたを乱反射した今日の夕焼け空は格別だった。沈みきった太陽がちぎれ雲を珊瑚色に下から照らし、雲の上へと突きぬけて、後光のように真珠色の帯を翳りはじめた青空へと放っていた。矢島舞美が握手とともに差し向けてくれた笑みみたいに、とびきり柔和な夕焼け空だった。

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