身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

未知の女優、女優のみち vol.1

仲間由紀恵成海璃子宮崎あおい満島ひかり真野恵里菜

  • Q.E.D.証明終了』第1話を観た。わたしはミュージカル女優としての高橋愛の未来を信じている。だが、彼女はリハをじっくり重ねて役をものにしてゆくタイプみたいで、ある程度役を読みこみ、早撮りの現場でディレクターと軌道修正しながらそこにさっと息を吹きこむような対応力はまだ足りないようだ。馴染まない演じ手から限られた時間内で瞬発力を引きだすディレクターのサポートの力量にも問題ありそう。脚本があの『ブレーメンの音楽隊』(とくに辻希美バージョンが出色だった)の藤本有紀なので、2話以降に期待しよう。
  • 普段はTVドラマをほとんど観なくなったわたしが、その日は『早春スケッチブック』(!)と同じプロデューサーによる山田太一ひさびさの連続ドラマということで、『ありふれた奇跡』第1話も観てしまった。平易な言葉と“間”と無言が、多彩なニュアンスを与えてゆく台詞劇の妙味にやられた。これといって特徴がなく、どこか煮え切らない左官修行の青年を演じ、いまをうろたえ、まどい、生きる者の波動をハッとするほど感じさせる加瀬亮は、改めてすごい役者だなと思った。偶然の出来事から彼に気持ちがなびく仲間由紀恵の役が、ポジティブな面もネガティブな面も溶かしこんだふうに普通で、そこがチャーミングなのもいい。アイドル時代も演技の道に転身してしばらくも不遇だったのに、仲間さんも華と張りのある素敵な女優になったのねぇ。ドラマ好きのれいなちゃんにもぜひ観てほしい。
  • 思えば、おととしは『神童』と『あしたの私のつくり方』で天才女優・成海璃子を発見した年だった。ドラマ『TRICK』で仲間由紀恵の少女時代を演じた子だ。去年は同じく天才肌の宮崎あおいが国民的女優になった年ですね。『徹子の部屋』でも“『篤姫』と『純情きらり』の宮崎あおい”という紹介のされ方で、とても淋しい思いをした。わたしにとっては、いまでも『EUREKA/ユリイカ』(監督・青山真治)や『害虫』(監督・塩田明彦)の、国境を越えてとどろく宮崎あおいだ。あれもおととしだったか、『NANA2』を辞退した宮崎あおいが、彼女の原点である『ユリイカ』の後日談『サッド・ヴァケイション』で、朝ドラ的な臭みを一切手放し、吹きさらしのままこの世に生を受けた『ユリイカ』の梢ちゃんが成長した姿として、薄明のスクリーンにすっくと照り映えてみせたときの深い感動は何ものにも代えがたい。お茶の間の国民的女優になろうが、宮崎あおいはまた、世界の闇にこそ映える映画女優として、きっと戻ってきてくれるだろう。
  • 去年は暮れに観た園子温監督の『愛のむきだし』で、次代の女優・満島ひかりを発見した。『デスノート』では夜神月の妹役を演じていた。あとから資料を見てFolder5のメンバーだったと知り、うしろのほうで踊っていたあの長身の可愛い子かとぼんやり思いだした。『愛のむきだし』での満島ひかりは、妹型ヒロインとカンフー・ヒロインの間をギャグみたいに往復しながら、血と鼻水にまみれた愛する女へと荒々しく振り切れる。性根の坐ったそのむきだし方は素晴らしいですよ。もうひとりの主演、せっせと罪をつくる純情少年の西島隆弘もいい。空っぽのまま狂い咲く安藤サクラもいい。まさに、237分1本勝負! という感じ。純愛ものはもう食傷、でも火傷するほどピュアな愛になら触れてみたいという方に勧めたい。自分の世界の殻を突破したいと願うすべてのヲタに、あるいは、ヘンタイと罵られたことのあるビッチたちにも勧めたい。初日は1月31日(土)。渋谷のユーロスペースほか全国単館系での公開です。
  • 小中和哉監督の5分間ドラマ『ポッキー4シスターズ!〜出せない手紙〜ずっとあなたが好きでした』の真野恵里菜には、小さな失恋体験に傷ついて大股で歩いたり、たまらなくなって走りだしたりする、女優として無垢な姿になにより惹かれる。橋の上から彼をみつけて川べりに手を振るその視線の先には見知らぬ恋人らしき女がいて、真野ちゃん演じる学校帰りのヒロインの顔がさっと曇る。その横顔に風が行きすぎ、長い黒髪がうつむいた頬から肩へと波を打つ。いいなぁって思う。でも、秘めた想いのたけを彼の犬に託す見せ場なんて、まだまだだよね。真野恵里菜は一昨年春の新人公演1回目のころから演技への意欲を示していて、たいして目立つパートをもらえなくても舞台映えした。おおげさな身振りがなくても自らチャームポイントにあげる「ぱっちり二重の目」で、涼しげにこちらを射ぬいてくる。優秀な監督にうまく出会えば、未知の映画女優の才が花開くかも、なんてそのころから夢見ていた。だから、映画志向の新人女優の登竜門にもなっている、BS-iドラマでの主演抜擢はほんとにうれしい。しかも、ワンダコンの翌日にクランクインした『東京少女真野恵里菜』の第1話担当は異才・佐々木浩久監督だ。
    • エルダークラブ公演はチケットを取り損ねて悔しいので、こんなことをつらつら書き連ねています。vol.2に続きます。

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