身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

2009新人公演 11/23 夜(横浜BLITZ)

  • 仕事を抜けるに抜けられず、『恋するハローキティ』にはついに行けませんでした。楽日を土日まで引っ張ってくれていれば。悔しい。プロデューサーの丹羽多聞アンドリウさんが自身のブログに今回の舞台演出はTBSの若手エース武藤淳で、彼のデビュー作はBS-TBSの『恋する日曜日』、それは北乃きいのデビュー作でもあるんだ、ってなことを1,2ヵ月前に書いていました。それからしばらくして偶然か意図的にか、4年前の当該作『恋する日曜日 夏の記憶』がBS-TBSで再放送されました。更衣室でスカートが盗まれただの、毎日口実をつけて夏休み中の先生を学校に呼び出し、あげく自宅の寝込みを襲って「先生寝ぼけてキスするんだもん」なんて嘘ついたり、北野きいの捨て身の小悪魔ぶりがチャーミングこの上なかった。先生のアパートに制服姿で押しかけ、自分の家みたいにソックスを脱ぐ、そういう10代特有の傍若無人さがさりげなく演出に生かされています。フィアンセがいて正式採用も間近な非常勤の立場の先生が、今なつかれると迷惑だと突っぱねた後、小悪魔的な仕業はすべて彼女の「助けて!」のシグナルだったと知れるドラマの転調のさせ方も上手い。こんな肉厚で直球勝負な演出ができる希少な若手の実力派なら、きっと真野恵里菜にも福田花音にも前田憂佳にも血の通った役を吹きこんでファンタジーを生きたものにしてくれるだろう! って心の準備も万端だったんですけど……。とても評判がいいですね。いずれDVDが出れば、舞台の魅力の一端だけでも味わわせてもらいます。
  • 今回の『新人公演 横浜FIRE!』は、今年春の真野恵里菜に続いて福田花音前田憂佳和田彩花小川紗季の来年春に向けてのメジャーデビューが発表された公演としてまず記憶されるでしょう。佳曲ぞろいのスマイレージのステージを、四人四様デビューへの胸を膨らませたほかほかの想いのまま胸から胸へと受けとめる歓びはなにものにも替えがたい。閉まろうとする電車のドアにわたしが体を張って迎え入れてあげたのに、マイペースな憂佳ちゃんはノロマな自分に気づきもしない、なんてあやちょの面白MCともども今回のハイライトをなしていました。同時に、今公演にはもうひとつのひそみがあるようでした。同年代エースの脇に甘んじ、わりをくっていた3人に意識的に光を当てる。年少組同年代の超新星宮本佳林の引き立て役と思われがちだった竹内朱莉、年長組同年代の吉川友北原沙弥香に半歩届かなかった森咲樹、そして福田・前田・和田の中三トリオの影に隠れがちだった佐保明梨を全面フィーチャーすること。スマイレージとは別の動きの、今後への布石なのかはわかりませんが、全体曲をふくめてそれは徹底していました。
  • 「ビート・イット」を入れこんだラス前のダンス・バトルでは、この3人に古川小夏北原沙弥香を加えた5人1組が全4組中の真打ちみたいに現れて瞬間、火と風が舞台に逆巻くような気を感じました。佐保明梨の初ソロ「蝉」や森咲樹竹内朱莉の凸凹デュオによる「絶対解ける問題X=ハート」も鮮度が高く、異例の主役扱いに3人それぞれが食らいつき、充実を感じているよう。観ていてうれしくなりました。とりわけ、心に残ったのは、第2期しゅごキャラエッグ(佐保明梨譜久村聖前田彩里)による「わたしのたまご」です。子供にかえってほわほわの雲の平原を駈けるような心地。その後の、森咲樹吉川友北原沙弥香竹内朱莉の「即抱きしめて」がまた、これに輪をかけて素晴らしかった。今回のベスト・パフォーマンス賞を勝手に与えたいくらいです。℃-uteの即抱きが「ほのかな香り」の水彩の世界なら、こちらは厚塗りの油彩の世界。蹴り上げ、しゃがみ、反り返り――激しい動きのなかのひとつひとつのキメにドキッとするような色があり、吐息があり、肉感があります。ああ、すごいよ、すごいわぁ♪ 舌先で擦れるようなS音が、こんなにさざめき艶めいて響いてくる曲だったとは! そんな空間にタケちゃんが紛れこんでる場違いさがなんとも可笑しくもあって。それにしても、松田聖子の「制服」を愛くるしく歌っていたモリサキちゃんも成長したなぁ。もうあれから3年半が経つんですね。

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