身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

モーニング娘。10期オーデ 合格予想

  • スポーツ系や報道系を除けば地上波番組で唯一わたしが楽しみにしているテレ東『ハロプロ!TIME』が、予告篇的なものを入れると4週にわたって娘。10期「元気印」オーディションを取りあげてくれた。三次審査、合宿審査と続いて最終審査にまで残った8人にはみんな可愛さと同時にごつごつした野趣があり、誰が受かるか、いまからわくわくどきどき……てな興に乗っかって、予想というより、この娘が合格したらいいな、という願望含みの酔狂メモ。合格ラインは5期以来の4人という見立てで。

14番 佐藤優樹(まさき)12歳 北海道

  • 優等生にも問題児にもみえる。とびきりの美人にもずんどうのイモにもみえる。映像断片からうかがうかぎり、待ち時間はいちばんだらだらしてるふう。テーブルに両肘ついて口元で指関節を少しおしゃぶりしてみたり(三次審査前)、何が可笑しいのかうずくまって笑いこけたり(合宿歌練前)。緊張感ゼロ。幼児期の癖がぬけないのか、レッスン中も手元に落ち着きがなく、夏先生から集中砲火を浴びた。でも、ケロッとしてる。泣かない子。不言実行の子。最終審査までの2週間で戦闘モードに入った感がある。牧場の娘なのか、草原での自主練の画(いかにも素人撮りの)がインパクト絶大。この年ごろって、本気になれば、短期間で劇的に変われるんだとあらためて思い知る。あるいは、髪型や顔の造作を引き立てるプロ・メークの力を誉めるべき? ダンスの課題曲、センター・ポジションに立って初っぱなの振り向くキメのクール・ビューティぶりに一撃される。北海道の大気を思い出させる、濁りのない声もいい。

215番 田中風華(ふうか)12歳 宮城県

  • 合宿の尺は30分番組ではやっぱり短すぎる。こう切れ切れにされちゃうと、それぞれの感情の流れを局面局面で細かいところを読み取れなくなる。ひと色に物語化しようとするナレーションや編集に誘導されてしまう。ましてや、彼女はほとんど映らなかった。印象に残るはずがない。それでも、ダイナミックなダンスはオーデ予告編的な第1週から目を引いた。最終審査の課題ダンスでは、長い黒髪を振り乱して踊る彼女に自然と惹きつけられた。たっぱや手の長さを生かして、引き絞られた弓のようなしなりがある。それが解き放たれ、一閃に「気」が飛んできそうな。肌は、空にかざせば蒼く染まりそうなほど透明な白さ。体は「風華」の名のとおり、風にふきとばされそうなほど華奢。存在ごと消え入りそうな、はかなさがある。それでいて、歌う刹那、表情になんとも苦しげな「狂い」が宿る。もっと狂い咲くがいい、フォクシー・レディ。キツネ目の美少女よ!

222番 村上咲楽(さら)13歳 宮城県

  • 三次の歌審査に「雨の降らない星では愛せないだろう」でのぞんだ。上手寄りナナメからとらえたスッピンの表情に雨や風の匂いを感じる。技巧はない。土から掘り出されたばかりのような歌がこちらに響いてくる。合宿審査では歌の先生に「世界がちっちゃい」と言われた。「泣きたくない」のに悔し泣きした。ちょっと肩口から下が脱力したような歌い方。腰がふらついてる。なのに、媚びのない笑みにも、笑みの消えた伏し目がちの顔つきにも「できないことにどんだけ取り組むか」(夏先生)という「姿勢」のよさを感じる。最終審査前の路上で「今日で私の生活のすべてを変えられるように」とはにかんだ。変化の予兆。秘めた「世界」の大きさを、娘。のなかで感じてみたい。

242番 工藤遙(はるか)11歳 埼玉県

  • エッグのかりんちゃんではなく、くどぅーがいる! という驚きから、わたしのなかで10期オーデははじまった。目線に「落ち着きがない」と合宿で歌の先生に指摘され、みんなより1年半早く活動してるんだから、もっとしっかりしなきゃ、と大粒の涙を流した。そのプロ意識。1年前、売られた喧嘩は「負けたことがことがない」と言っていた。1年半の間、ファンに見せたことのなかった涙と喧嘩上等キャラのギャップは衝撃的で、ひといきに気持ちを持っていかれた。合宿ではいちばん年下なのに、休憩時間も待機時間も夜の自主練でもライバルたちとつるむ隙をみせなかった。「正しさ」のためには孤立を恐れない痩身の一匹狼――昨秋の劇『今がいつかになる前に』で好演した少女・叶多(かなた)役が思い出される。「できることはすべてやって気持ちよく家に帰れるようにしたい」と、最終審査前の路上にて。イベントでも先鋒となる彼女のトーク力は並じゃない。公式談をオウム返しにするような当たり障りのないことをしゃべらない。まだ小学生なのに、自己消化した上での言葉の発進力がある。そして、遠い記憶をくすぐってやまないあのハスキー・ヴォイス……。
  • 受かってほしい。芸にかけては求道的な鞘師里保の隣りに彼女を置いてみたい。きっと通じるものがあるはず、と思う。でも、迷いもある。宮本佳林ワントップ体制の両脇を、譜久村聖モーニング娘。)と竹内朱莉スマイレージ)を輩出した4期最後のタマゴ金子りえと、陰の実力者・高木紗友希が支える新生エッグのコスモスに、工藤遙がセンター斜め後ろの「1.5」のポジションから雷雲となってスーパーエースをおびやかす『9月の生タマゴShow!』。その面白さを味わったばかりの身には、将来の選択肢に事欠かない「はるかりん」コンビをもうちょっとエッグで見ていたい、急ぐことはない、という想いも一方にある。ミュージカル『リボーン』が間近に迫り、暮れには早春から延期になった待望のオトムギ公演『1974(イクナヨ)』が控えている。もっとも、スマイレージみたいにツアー直近の加入ではなく、ツアーを終えるタイミングでの加入である。受かったら受かったで、娘。とエッグをまたいだ過酷スケジュールを、工藤遙ならいとも涼しげに、手負いの全力少女・叶多ちゃんみたく両立させてしまうだろう。

あともうひとり……

  • 思い切って初期メン以来の5人を獲るとすれば、あともうひとりは? 最終審査前の控え室の談笑風景がわれ知らず、10期のまとめ役的なお姉さんポジションにおさまっているのが微笑ましかった東京の綺麗どころ、飯窪春菜(16歳)か。エンジンのかかりが遅いおっとり関西娘風情に、9期落選再挑戦の気合いがほの浮かぶ大阪のコケティッシュ・ガール三輪咲月(12歳)か。合宿2日目のお昼どきか、非常階段の踊り場で工藤遙と一心に歌の練習をする大上陽奈子の姿がちょっと忘れられない。一見なんでもないシーンだけど、階下から引きのアオリで捉えられたこの工藤・大上ツーショットのストイックな空気感は名場面だと思う。ならば、大阪の大上陽奈子(13歳)か。
  • でもなぁ。ハロプロ好きでジャズダンス歴5年という大上さんだが、ダンスの見せ方、そのショウマンシップという観点では、ダンス歴2年という石田亜佑美(あゆみ)のほうに軍配が上がる。田中風華の大ぶりのダンスの比べ、彼女のダンスはミニマルな動きにメリハリと密度がある感じ。歳に似合わぬ、ほのかな婀娜っぽさもある。高橋愛センター、左右に新垣里沙鞘師里保という組み合わせで娘。春ツアー『新創世記 ファンタジーDX』の至宝となったダンス・チューン「Moonlight night 月夜の晩だよ」を、鞘師里保センター、左右に田中風華・石田亜佑美という新バージョンでいつか観てみたくて、宮城組3本の矢の残り1本・石田亜佑美(14歳)を最後に挙げたい。つんくPの言う「エンターティナーとしての人間力」に関しては最後まで見えてこなかった、どう伸びるか未知数ではあるけれど。

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