身すぎ世すぎ。

映画、演劇、HELLOが3本柱の雑感×考察

映画

乱暴と待機  小池栄子、美波 感想

原作は演劇と文学を往還する本谷有希子で、みずから舞台にも小説にもした。わたしは2ヵ月ほど前に映画を観たのみ。それがまだ尾を引いている。日本映画は秋からお正月にかけて、なんの因果かにわか時代劇ブームで、力作と凡作の幅はあれど、総じて悲愴美に…

君に届け  多部未華子 感想

多部未華子の映画なら、弟をからかいながらの学校からの帰り道、通りの辻でふと見慣れた風景が変わって家に着くともぬけの殻、両親からはぐれちゃうというパラレルワールド的設定を、自立の辻に突然立たされる女の子の青春ジュブナイルに取りこんだ佳品『ル…

悪人  深津絵里 感想

この秋の公開作で、ここから見知らぬどこかへと針を振り切る手応えのあった日本映画は、新人女優・寉岡萌希のみなし児の輝きに目を奪われる瀬々敬久監督4時間38分のサーガ『ヘブンズ ストーリー』、本谷有希子の演劇と富永昌敬の映画が変種のセックス・ウォ…

ぼくのエリ 200歳の少女  感想

これを観てもう1ヵ月以上経ちますが、まだ印象は鮮烈なままです。今日が公開初日(銀座テアトルシネマほか)となります。原題は『LET THE RIGHT ONE IN』。監督いわくモリッシーの「LET THE RIGHT ONE SLIP IN」からとったそうですが、日本語にすると「正し…

借りぐらしのアリエッティ 感想

ジブリ作品に詳しいわけじゃないけれど、宮崎駿さんや高畑勲さんが自分たちより若い世代に監督をゆだねた映画の系譜がありますよね。『海がきこえる』とか『耳をすませば』とか『猫の恩返し』とか『ゲド戦記』とか。そこに『借りぐらしのアリエッティ』を連…

さんかく (小野恵令奈、田畑智子) 感想

真新しい胸の刻印をこのブログになんとか留めておきたいなって思いつつ不規則生活の身の上に足をすくわれ、結局、書けないまま時が過ぎていった作品がいくつもある。この春3月に池袋の東京芸術劇場小ホールで観た多部未華子主演の『農業少女』(作:野田秀…

怪談新耳袋 怪奇「ツキモノ」「ノゾミ」 感想

どきどきした。第一話『ツキモノ』と第二話『ノゾミ』がみごとな対照を成している。動のなかで身動きがとれなくなる一話、静のなかで脈打つものがある二話。世界が干からびてゆく一話、よどみのなかで沈んでは浮かぶ二話。青みの凍みる一話、赤みの沁みる二…

星砂の島のちいさな天使  感想

表バージョン ある朝、竹富島の砂浜に打ち上げられた謎のヒロイン美海(飯田里穂)はファンタジー界の血を継いでいる。とするなら、ヒロインと人魚伝説のつながりを直観的に見ぬき、あの女に近づくのは悲劇の元だよって幼なじみの瞬一に伝えようとする島の中…

晩秋は『スペル』の呪縛にかかりたい。

『スパイダーマン』シリーズですっかりハリウッドのメジャー監督になったサム・ライミ。それはそれでめでたいことだけど、新作『スペル』(11/6公開)は彼の原点である『死霊のはらわた』に本卦還りした、どこかインディーズの匂いが残る痛快作です。音や風…

松本人志の『しんぼる』 感想(再考)

笑いの神様の仕業? 内部と外部を結ぶ回路のねじれ方。 『しんぼる』を観てから10日ほど経ちます。今日が初日ですね。あれから観た映画では、なんの曲だっかか、そう、いきなりタイトル・バックにディミトリ・ティオムキンの「遙かなるアラモ」が大音量で流…

松本人志の『しんぼる』−超越者への扉

来週9月12日に公開されるダウンタウンのまっちゃんこと、松本人志監督の新作映画『しんぼる』は、お笑いのネタではなく寿司ネタが効いています。正しくはマグロの握りなんですが、口のなかに頰ばると、なんというか笑いの鬱血したギャグが出口を求め、時を…

チェイサー vs チョコレート・ファイター

または、チェイサー岡井千聖 vs ファイター矢島舞美 和田彩花のブログ「あや著」がはじまった。福田花音がつけたニックネーム「あやちょ」に引っかけて、彩花ちゃん本人が頭をしぼって考えたらしい。頓智が効いててセンスいいね。そのブログのネタが、タンポ…

怪盗ボーノから、傑作『グラン・トリノ』へ

BUONO!の新曲「MY BOY」のPVは楽しい。みなさんが言うように、きっと元ネタは『キャッツ・アイ』なんだろうけど、鈴木愛理がレーザーセンサーを匍匐前進で切り抜けるところなんて、わたしは『エントラップメント』でニセ泥棒キャサリン・ゼタ・ジョーンズが…

『フィッシュストーリー』 寄り道的感想

監督・脚本:中村義洋 原作:伊坂幸太郎 出演:多部未華子他 世界を救うヒーローはたいてい5人。成功するグループも5人。ジャクソン・ファイブもフィンガー5も5人だった。モーニング娘。のオリジナル・メンバーだって5人だよ。――そんな会話が交わされる…

『カンフーシェフ』 サモ・ハン&加護亜依

加護ちゃんの再帰初仕事を飾った香港映画『カンフーシェフ』は去年の春ごろ、さんざんワイドショーで取りあげられながら、どこも監督が誰かすら教えてくれず、結局、海の物とも山の物ともつかぬ映画と、眉にツバをつけて期待半分に収めておくしかなかった。…

未知の女優、女優のみち vol.2

真野恵里菜→K・ブランシェット→アンジェリーナ・ジョリー ハロメンのなかでこのところいちばん多忙に働きまくっているのは、去年の暮れが里田まいなら、年始めは真野恵里菜ではないだろうか。菫色や桜色などただひとり色違いのコスチュームで、シンメの中心…

未知の女優、女優のみち vol.1

仲間由紀恵→成海璃子→宮崎あおい→満島ひかり→真野恵里菜 『Q.E.D.証明終了』第1話を観た。わたしはミュージカル女優としての高橋愛の未来を信じている。だが、彼女はリハをじっくり重ねて役をものにしてゆくタイプみたいで、ある程度役を読みこみ、早撮りの…

『星影のワルツ』監督/若木信吾

吉澤ひとみ『8teen』の写真家が映画を撮った! さしもの百戦錬磨の吉澤フリークも、まさか『星影のワルツ』まではフォローしていまい。わたしはこれを観てもう数週間になるのだが、その魅力の一端だけでもなんとか書き残しておきたいと思う。充実を誇る吉澤…

新生『スケバン刑事』補遺

『17才』『空中庭園』の“想い出”に向けて。 『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』って、なにげに俊才ぞろいのスタッフなんですよ。製作の黒沢満は、松田優作の代表作『最も危険な遊戯』『それから』をはじめ、かつて一世を風靡した東映Vシネマの観るべ…

新生『スケバン刑事』感想

『スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ』をひとあし早く観てきました。以下はその感想ですが、「ぜったい映画館に行く」とすでに決めていて、いまから楽しみにしている方は読まないほうがいいと思います。観に行くかどうするか迷っている方は、判断材料のひ…